「五条くん、これ受け取ってください!」

割と可愛い封筒に可愛いシールで封をした直球告白みたいな手紙を五条くんに両手で差し出した。
当然彼は意味がわからないと言いたげにサングラス越しに目をぱちくりとさせている。

「え……どした?キモ……」
「ひどすぎる」

一つ下の後輩はそのはっきりした物言いが魅力ではあるのだが、それにしても素直すぎるだろう。とはいえ、普通に接していた先輩からこんな手紙を突然渡されたら誰だってこういうリアクションもしてしまうだろうから、まあ致し方ない。
半ば思いつきみたいなことなのだが、私がこんなことをしているのにも理由があって。

「とりあえず中見てもらっていい?」
「いま?ここで?普通一人になってから開けるもんじゃないの?」
「いいから。そういうんじゃないし」
「どういうんだよ……」

ぺり、と軽い音を立ててハートのシールが剥がされる。中には一枚の便箋のみ。封筒とセットになっているこれまた可愛いやつだ。
そこに並んでいるであろう私の「目標リスト」、そして羅列された文字たちを碧い瞳がすらすらと追っていく。

「え、ごめん。読んだけどやっぱよくわかんねえわ」
「なんでよ!書いてあるじゃん目標リストって!」
「そもそもこれなんの目標?なんで俺に渡してくんの?」
「話すと長くなるんだけど…」
「まとめて」
「卒業したら海外行くのね、私。で、多分海外って結構死亡する確率上がるじゃん?!だからその前に」
「ストップ」
「え」
「……海外行くの?」
「うん」

引っかかったのはそこらしい。まだ本題に入る前なのに。
私より圧倒的に高い位置にある青はサングラスに遮られていると言うのにまっすぐこちらを見ているのがわかる。彼の背後に隠れた太陽が、ひと知れず目の前の真っ白な髪を照らすものだから、その反射につい目を細めてしまう。

「え、なんで?日本いればいいじゃん」
「私もよくわかんないけど行くことになったんだよ」
「アンタ英語できたっけ?」
「できない」
「なんで?」

五条くん、すごい質問攻めしてくるじゃん。こんなに興味を持ってくれるとは思わなかったよ。でもそんなことよりも、私にはリストの内容の方が大切なのだ。

「とにかく!死ぬ前にしてみたい目標リスト!五条くん、手伝ってくれない?」
「……はぁ〜〜………?」

すごい、目だけで伝わってくる。なんで俺なんだよ、めんどくせえなあ、というのがもうひしひしと私の体全てに突き刺さってくる。

「だったらオマエ。一番最初にやることあんだろ」
「なに?」
「まずこの海外撤廃だよ!!」

それは私の力じゃ無理でしょ。五条くんだったらできるかもしれないけど。