aさんに会ってから彼女のことが頭から離れなかった。いや別に彼女のことが好きだとかそんな可愛い恋心だとかそういう意味じゃない。美人だったけど。
あの鎖が頭から離れないのだ。恐ろしさにあの晩は夢に見て魘されたくらいだ。あんなものが彼女に何の影響も与えないはずはない。それなのに何で彼女はあのままで良いなんて言ったんだろう。ああダメだ、わからない。でも放ってなんかおけない。
ここ数日ずっとループし続ける思考に重い溜め息がでる。

「だああああああうるせえ陰毛頭!!!」
「ぶへっ!!」

ザップさんの飛び蹴りを食らってしまった俺は強制的にループしていた思考を止められた。

「何するんですか!」
「さっきから溜め息ばっかり吐きやがってうるせえんだよ!!」

すっかり忘れていたけどここはライブラのいつもの執務室で、いつものメンバーが揃っていた。俺はソファーに座ったまま考え込んでいたんだった。

「何か悩みでもあるんですか?話ぐらいなら聞きますよ、レオくん。」

ザップさんと違い優しい言葉を掛けてくれたのはツェッドさん。この二人は兄弟弟子のくせに何でこうも性格が違うかな。

「……呪いのようなものを掛けられてもそのままで良い理由って何なんですかね。」

ツェッドさんの言葉に甘えて相談してみた。ザップさんの「ドMなんじゃねーの」という声は聞こえなかったことにする。ツェッドさんは少し考える素振りを見せてから口を開いた。

「詳しいことはわかりませんが、呪いが上手いこと作動していないか、そもそもそれが呪いではないとかですかね。レオくんの口振りからしてそれが呪いとは確信をもってないんじゃないですか?」

確かにあれが何かわからない以上、呪いと判断したのは俺の勝手な想像だ。でもあの鎖が纏うものは決して良いものではないことは確信していた。

「レオ、お前面倒臭いことに首突っ込んでんじゃねーだろうなぁ。」
「ちょっと気になっちゃって……。」
「なんだぁ、女かぁ?かっこいい所を見せようと頑張ってんのかぁ?」

ザップさんがからかうようににやにやと笑みを向けてきた。

「そんなんじゃないですよ。困ってるんじゃないかと思って。」
「女は否定しねーんだな。美人か?」
「ええ、まあ綺麗な人でしたけど……。」

美人と聞いた瞬間、ザップさんの目付きが変わった。

「よしレオ、お前が惚れてる女見に行ってやる!行くぞ!」
「え、ちょっと、だから違いますってええええええ!!」

ザップさんに引きずられるようにライブラを後にした。この人ただ暇だったんじゃないか?
レオくん気を付けて、とツェッドさんの声が聞こえた気がした。




20160706

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