アルヴェアーレはチャイナタウンとリトルイタリーだった所の間にあるようだ。aさんに教えてもらった道をザップさんときょろきょろと歩いていると目的の店を発見した。蜂の巣の看板がぶら下がっているガラス張りの店内を外から覗くと、どうやら蜂蜜専門店のようだった。店の外にまで甘い匂いが漂ってきている。狭い店内にはaさんがいないのがすぐにわかった。唯一いたふくよかな女性店員と目が合ったので慌てて反らす。

「おい、本当にここなのかよ。」
「おかしいな……店名はあってるみたいですけど。」

疑いの眼差しを向けてくるザップさんだけど、正直よくわからない。どうしたものかと困っていると店の扉が開いて先程の店員が顔を出した。

「あんたレオナルド・ウォッチかい?」
「え?あ、はい。」
「aから聞いてるよ。音速猿を連れた奴が来たら案内してやれってな。」

いつも一緒のソニックを見ると返事をするように短く鳴いた。
急に名前を呼ばれて驚いたけど、どうやらこの店で合っていたようだ。店員に連れられるままザップさんと店の奥に足を運ぶとそこにはレストランが広がっていて驚きのあまり声が漏れる。小さな蜂蜜専門店からは考えられない広さの店内は、ランチ時を少し過ぎた時間だったがまだ賑やかだった。あたりを見回すとaさんと似たようなオーラの人を何人か見付けた。aさんを初めて見た時は変わった色のオーラだと思ったけど、このあたりじゃ普通なのかな?
オーラの色を辿ると目当ての人物を発見した。ソファー席に座る彼女に近付くと、俺に気が付きにっこり微笑んでくれた。

「こんにちは、aさん。」
「アルヴェアーレへようこそ、レオくん。」

促されるまま向かい合うようにソファーに座ると隣にザップさんも座った。

「あら、そちらの方はお友達?」
「はじめまして、ザップ・レンフロです。」

aさんの手を握って自己紹介をしたザップさんは表情を見る限り、彼女のことは好みだったようだ。無駄にキリっとキメ顔してる。恥ずかしいから止めて欲しい。まわりの人もこっちを見ている気がする。

「はじめまして、aです。」

一瞬驚いたように目を見開いたけど、微笑んで名乗る姿は大人の対応か。するっとザップさんの手を逃れてメニューを広げて飲み物をすすめてくれた。手を離して欲しかったんだろうと思うと然り気なさは大人の対応だ。

注文したコーラが届いたので一口飲んでみるとほんのり甘かった。何か入っているのだろうか。
aさんのランチの残りなのか食べてる途中だったのか、俺達が来た時からある皿の上のポテトフライを貰ったソニックはご機嫌だ。でもご機嫌なのはソニックだけじゃない。

「aたん、連絡先教えて?休みの日っていつ?」
「あーもー止めて下さいよ、ザップさん!」

下心丸見えでデレデレと話し掛ける姿は本当に酷い。何でこの人ついてきてしまったんだ。

「うるせーレオ。こんな美人お前が惚れるなんて100年早ぇよ。」
「だーかーらーそんなんじゃないんですって!人の話聞いて下さいよ!」

人の話を聞く気が全く感じられないザップさんは再びaさんの手を取った。

「これからデートとか、」

その瞬間、場の空気が変わった。
重々しく息苦しい空気にザップさんも紡ぎかけた言葉は最後まで言えなかった。その原因が目の前に急に現れた男だった。本当に急だった。近付いてくる気配もなく、瞬きをした瞬間にここに現れたかのようにしか感じられなくて瞬間移動という言葉が脳裏を過ったけど、まさかとその考えを消そうとした。
暗い色のスーツに身を包み、髪をオールバックにした男は何より目が鋭く恐ろしく、嫌な汗が背中を伝った。

こいつ、普通の人間じゃない。

aさんの肩を抱いた男は口を開いた。

「俺の連れに何か用か。」

aさんの手を取っていたはずのザップさんの手はいつの間にか離れていた。
男の纏う漆黒のオーラが恐ろしく息苦しくて、敵意を向けられている本人のザップさんは俺の比じゃないほどプレッシャーを感じているんだろう。
ふとこの闇のようなオーラを知っていることに気が付いた。aさんに絡む鎖のオーラだ。見比べても全く同じで、呪いをかけたのはこの男だと確信した。

「ちょっとロニー、普通に帰ってきてよ。」
「お前に変な男が絡んで来ていたからな。」

男に恐怖しつつも呼ばれた名前を頭に刻み込む。この男の言葉と距離感を見れば二人は付き合っていることが想像できた。でも彼女の呪いをかけたのがこの男なら、付き合っているも無理矢理なんじゃ……?

「a、来い。」

彼女の腕を引っ張って立たせるとそのまま連れて行こうとする。

「レオくんごめんね、また今度。」

二人は店の奥に消えていった。姿が見えなくなるとザップさんと同時に大きな溜め息を吐いた。

「おいレオ……何だよあいつ……ただ者じゃねぇぞ。」
「知りませんよ、初めて会いました。でもきっとあの人が、」

呪いをかけた奴だと口を開こうとした所で二人の男がやって来た。痩せた男と太った男というアンバランスな組み合わせの二人はaさんと似たオーラを纏っていた。このオーラが意味をするものは何なのだろう。

「おいおい、aに手を出そうとするなんてお前ら無謀だなぁ!」
「ロニーがいる限りお前らには無理だな!」

けたけたと笑われ襟首を掴まれた俺たちは無理矢理引っ張られた。「何すんだよ!」というザップさんの声にもただ笑うだけの彼らはいったい何者だ。ロニー、と呼んだからにはaさんとも知り合いなんだろう。完全に彼らのテリトリーに来たよそ者の俺たちはそのまま店の外に投げ出された。

「300年後に来な、ガキ共。」




20160716

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