一晩考えて少し冷静になった。
ザップさんを頼りにしちゃダメだ。期待しちゃダメだ。いや、わかってたけど……!昨日みたいにaさんと話も出来なくなりそうだ。
ライブラの執務室で昨日と同じように溜め息が漏れた。

「くぉらこの陰毛頭ああああああ!!!」
「ぶへっ!!」

扉が開いたと思ったらザップさんが入ってきた瞬間飛び蹴りを食らわされてしまった。あれ、昨日もこんなことあった気が。

「アルヴェアーレに入れないとかどういうことだ!」
「え、朝から行ってきたんですか?」

蜂蜜店の方に居た女性店員に門前払いされたらしい。八つ当たりかよ。昨日ザップさんがaさんをナンパするから出禁になったんじゃ……なんてことをしてくれたんだ、この人は。きっと一緒に居た俺も出禁になってるんだろうな……。

「おい、お前たちアルヴェアーレで揉め事はやめてくれよ。」

今までひたすらパソコンで作業していたスティーブンさんと目が合った。机の上にはよくわからない資料が積み上げられていて忙しそうだ。

「アルヴェアーレといえばあのあたりを仕切ってるマフィアの……いや、カモッラの本拠地だからな。迂闊なことをしてコンクリート詰めにされて沈められても知らんぞ。」

一気に血の気が引いた。昨日摘まみ出されただけですんだのは運が良かったのかもしれない。危うくザップさんと海の藻屑になるところだった。
マフィアとカモッラの違いって何なんだろう、とか考えてる場合でもない。

「スターフェイズさん、ロニーって男知ってますか?」

この人は……。個人的なことだからって聞かないでおこうって決めてたのに……いや、助かるけど。助かるけど!

「お前たち……本当に何やってるんだ。」

ロニーの名前が出た途端、スティーブンさんの顔色が明らかに悪くなった。

「ロニー・スキアート。アルヴェアーレを本拠地とするマルティージョ・ファミリーの重要幹部である秘書で、謎の多い要注意人物のひとりだ。」
「秘書なのにですか?」
「カモッラの秘書だ、ただ者ではない。交渉役も担っていて、単独で他のマフィアに交渉をしに行っても無傷でやり遂げ、実力ははかり知れず異界人も物ともしないと言われている。関わらないですむならそうしたい相手だよ。」
「「……。」」

顔色が悪くなるのは今度はこっちの番だった。
すみませんスティーブンさん、もう遅いです。関わる所かもしかしたら怒らせてしまったかもしれません。ザップさんが。
いや本当に昨日は摘まみ出されただけですんで良かった。

「良いか、絶対に面倒事だけは起こすなよ。」

俺とザップさんは何も言い返せなかった。
……スティーブンさんには出来るだけ秘密にしておこう。




20190727

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