「来ちゃった……。」
思わず口から溢れた言葉と共に目の前の店を見上げればアルヴェアーレの文字。碌に話も出来ないからザップさんには黙ってひとりで来た。って言ってもソニックはいるけど。
ザップさんの言う通りであれば、門前払いされるみたいだけど……aさんとちゃんと話をするまでは諦めるわけにはいかない。
大きく深呼吸して店の扉を開けた。店内には前と同じふくよかな女性店員がいた。心なしか睨まれてる気がする。緊張のあまりごくりと唾を飲み込んで、口を開いた。
「あ、あの!こないだは俺の連れがどうもすみませんでした!そんなつもりなかったんですけど……。aさんと話がしたいんです。中に入れてください!お願いします!」
「別に良いよ。」
「え。」
何だって……?
緊張のあまり言葉を理解するのが遅れた。拍子抜けした。まさかこんなあっさり許可が下りるなんて。
「そもそも入れるなって言われてるのはあの色黒のお兄さんだけなんだよ。あんたについては何も言われてないから、前にaが言ってた『案内して』がまだ有効ってわけ。」
ちゃんと別個で判断してくれていたわけか。これはザップさんには秘密だな。俺だけaさんに会えるってバレた日には何されるかわかんねぇ。
奥のレストランに進むとaさんが前と同じ席に座っていた。今日もいてくれてほっとしたのも束の間、彼女の向かいにあの男・ロニーが座っていて背筋が凍った。それに話したい内容はあの男の前でするべきじゃない。やっぱり日を改めるべきかと考えたけど、行動に移すより先にaさんと目が合ってしまった。
「レオくん。」
「ど、どうも……。」
ひらりと軽く手を振られれば行かないわけにはいかない。おずおずと二人の前まで進んだけど、ロニーを直視出来ない。初対面の時に比べたら怒らせていない今が普通なんだけど……やはり独特の纏う雰囲気は変わらない。
「ねぇロニー、貴方頭領に呼ばれてたんじゃなくて?」
「ああ、だが……。」
「良いの、大丈夫よ。レオくんは私のお客様だもの。」
「そうか……まあいい。」
ロニーは席を立つと俺の肩に手を置いて言った。
「ゆっくりしていってくれ、レオナルド・ウォッチくん。」
「は、はい!」
店の更に奥に消えてったロニーの代わりに席に着いた。
あれ、俺ロニーに名前名乗ったっけ……?ふと疑問に思ったけど、きっとaさんが教えたのだと自己解決して気にしないことにした。
「レオくん、貴方は私に何が聞きたいのかしら?」
微笑んだaさんが綺麗で思わず胸がどきりと高鳴る。
さて、どうやって聞こうか。aさんを助けたい、最初はそれから始まったけれど、無知という恐怖を拭い去りたくもあった。
「さっきのあの男の人はいったい何者なんですか?」
「ロニーのこと?ここのちょっとした……偉い人で、私と付き合ってるんだけど……きっとレオくんはそんなこと聞きたいわけじゃないのよね?」
重要幹部であるロニーを偉い人と表現したのはカモッラという組織だというのを誤魔化したかったんだろう。
微笑みはそのままで何かを探るような、俺を試しているような視線を向けて来た彼女に首を縦に振った。
「付き合ってるって……それは本当にあの男のことが好きなんですか?何かと引き換えにそれを強要されたんじゃないんですか?あの男のオーラは人間じゃない。俺はaさんが心配なんです!」
「レオくんにはさ、」
名前を呼ばれて彼女の表情がさっきと僅かに変わっていることに気が付いた。口は弧を描いたままだったが、目元が笑っていなくなっていた。
「いったい何が見えているの?」
それはきっと何か真実に触れたんだと確信した。
20160801
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