「……俺には普通の人には見えないものが見えます。」

俺はaさんにこの目を手に入れた日のことを話した。
数年前のあの日、俺は妹の視力と引き換えにこの神々の義眼と呼ばれる能力を手に入れた。でもこれは俺が望んで手にした能力じゃない。妹の目だって元に戻してあげたい。

「aさんの首あたりに呪いのような鎖が見えるんです。それが纏う禍々しいオーラはロニーと同じもので……彼が貴方に何かしたとしか思えません。」

これが俺の杞憂で終わるならそれで良い。でも。

「もし、aさんが苦しんでいて助けを求めているのなら力になりたいんです。」

他の誰かにも俺のことやこの話を聞かれるかと思ったけど、今回はまわりの客も店員も近くに来ることはなかった。
思いを一気に伝えると彼女の目が再び優しく笑った。

「レオくんは優しいのね。本当は何か裏があるんじゃないかとも思ったけど……考えすぎだったみたいね。」

ごめんなさい、と苦笑した彼女は何か考えるように間を開けてから再び話始めた。

「貴方の言う、呪いに心当たりがあるわ。貴方が考えてる通り、それはロニーによってされたものよ。」
「じゃあ付き合っているっていうのも、」
「でもね、今ではロニーのことを愛しているの。」

呪いをかけられた相手を愛してるなんて、どういうことだろう。それに今、何かが引っ掛かった気がする。

「レオくんはその力を望まずに手にしてしまったのかもしれないけど、私は望んで契約した結果なの。それに呪いって言うけどある言葉が言えなくなっただけで、こんな古い呪いは今では意味を成していないわ。」
「じゃあ、本当に大丈夫なんですね?」
「ええ。心配してくれてありがとう、レオくん。」

安堵のあまり溜め息が溢れた。呪いだと思っていたものがaさんを苦しめるものでなくて良かった。契約だとか気になる所はあったけど、きっとそれは俺が知らなくても良いことなんだろう。勝手に余計な心配をして掻き回してしまってちょっと恥ずかしい気もするけど、本当に良かった。

「……でも100年前に言われてたら助けを求めたかも知れないわね。」
「え?」

ぽつりと呟かれた言葉に意味がわからなくて聞き返したけど、それは再び現れた男によって返答を得られなかった。

「良い言葉を聞いたな。」
「ロニー……聞いてたの。」
「お前が素直に愛してるなんて言うとはな。俺に直接言ってもらいたいものだが……まあいい。」

今回はこの男が近付いてきたのを確認出来た。たった今戻ってきた所だ。でも、じゃあ何時、何処で、今の会話を聞いていたというんだろう。そういえば、この男については結局何もわかっていない。

「a。」

彼女の名前を読んだかと思えば、ロニーはaさんに唇を重ねた。
え、ちょっと。人前で急に何してるんですか。しかも舌入ってるやつですよねえええ!
目の前で繰り広げられた展開に恥ずかしくなって目を反らした。

「レオナルド・ウォッチ。」
「は、はいっ!」

ロニーに名前を呼ばれて視線を戻した。aさんが彼を睨み付けているけど、顔が真っ赤なので効力はなさそうだ。そんな可愛らしい反応を見る限りじゃ本当に好きなんだろうなぁ。ロニーの表情からは何も読み取れないけど。

「これで俺たちが愛し合っているとわかっただろう?」

ええ、ええ!充分理解しましたとも!
なんてこった。俺を信じさせる為にいちゃいちゃしたってことか。もしかしたらこの人は楽しんでるのかもしれない。

「は、はい……すみませんでした、ロニー、さん。」

もうお腹いっぱいですすみませんご馳走さまでした!




20160808

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