その悲報を受けたのはもう何回目になるのだろうか。
あの船に乗っていた仲間が食われた。またもセラード・クェーツによって。私が把握していないだけで、彼に食われてしまった人はもっといるんだろう。あの人はいったい何人の同胞を食えば気がすむというの。いやきっとあの男の知識欲というのは満たされることはなく、全ての不死者がいなくなるまでこの食い合いを続けるつもりなのだろう。こんなことになるなんて、私たちが不死者になることを選んだのは間違いだったのではないかと悩む者も少なくない。あの男に見付からぬよう怯えてひっそりと隠れるように過ごしている仲間もいる。
「何とかしてセラードを止めないと。」
そう言ったのは悲報を伝えてくれた仲間であり、実の弟をセラードによって失ってしまったマイザーだ。
「もう誰もセラードの恐怖に怯えなくて良いようにしなくてはいけないんです。」
自分に言い聞かせるように言ったマイザーはきっとグレッドの敵を討ちたいのだろう。弟思いの彼のことだ、悲しさや悔しさは私の想像もつかないくらい深いものなのだろう。
「貴方のことだってセラードから守ってみせます、a。」
その言葉が仲間思いだから出てきただけだったとしても、胸が熱くなるほど嬉しかった。彼が私のことをただの友人だと思っているのはわかってる。だって私はロニーと付き合っているんだもの。
「ありがとう、マイザー。」
好きとさえ伝えることが許されない私には、この思いを伝える方法はもうない。でも彼の為に選んだことだから後悔はしていない。
「まあ貴方のことはロニーがきっと守ってくれるんでしょうけど。」
ただ、時々無性に苦しくて悲しくなる。
苦笑する彼に何て言葉を返したら良いのかわからなかった。本当はあの悪魔なんかより、側に居て欲しいのは貴方なのに。
「でも最期は貴方に食べて欲しいわ、マイザー。」
貴方は嫌がるのかもしれないけれど、たったひとつだけ貴方に気持ちを知ってもらう方法があった。ロニーとの関係だって偽りだと理解してもらえる。私の全てを貴方に与えることが出来たなら……。
笑ったつもりだけれど、上手く表情を作れたかどうかはわからない。ただ、返された言葉に泣きそうになったのは間違いなかった。
「私も食われてしまうなら、貴方に。」
あまい夢のようでいてそれは毒のようにこころを蝕んだ
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フィーロ達が酒を飲む前の1930
20160813
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