油断した……。
右腕と左足をケガしてしまった。大したケガじゃないけど、あんな雑魚にやられたかと思うとため息が出た。勿論返り討ちしてやったけど。見るも無残なくらいぐちゃぐちゃにしてやったから、身元を判別するのに今頃警察は困ってるんだろうなぁ。まあどうでもいいけど。

ケガがどうとかじゃなくて気持ち的な問題で、重い足取りでやっとたどり着いた自宅には、何故か仕事仲間のクリスが居た。仕事仲間と言っても私はホムンクルスではなく人間だし、たまに依頼されて手伝うくらいだ。

「なぁに?今は気分最悪だから仕事する気にならないんだけど。」

ため息をつきながら私はソファーに座った。

「今日は依頼があって来たわけじゃないよ。ただaに会いに来ただけさ。」

どういうつもりなのか、クリスはたまにこうやって私に会いに来る。ティムもアデルも、依頼主であるヒューイだってプライベートで会いに来る事はないのに。

「でも来て良かった。まさかaが傷付いて帰って来るなんてね。」

そう言いながらクリスが私に覆いかぶさって来た。そして右腕に触れ、二の腕から滴る血を嘗め上げた。

「ちょっと、クリス!何するのよ!」

クリスの肩を押せど止める気配は全くない。

「aの血が勿体ないからね。」

血を嘗めるその姿は見た目以上に吸血鬼のようで、それがあまりにも似合い過ぎていて、この行為に違和感を感じる私がおかしいと思わされそうになった。

「左足もケガしてるんだろ?」

スカートが破けているのに気が付いたクリスが脚に触れた。スカートを捲り上げられて太ももに舌を這わすその姿は第三者に見られたら色々と勘違いされそうだけど、クリスは多分そういう事をしたいわけじゃないと思う。
こういうのヴァンパイアフィリアっていうのかなぁ。よく知らないけど。

「クリス……もういいでしょ、止めて。」
「なに、感じて来ちゃった?」
「馬鹿。」

顔を上げてにやにや笑うクリスを睨みつけたが、その表情を崩さなかった。

「まさかクリスに血を嘗める趣味があったなんてねぇ。」
「aの、だからだよ。aのだから食べちゃいたいって思うんだよ。」
「?何それ?」

さっきも勿体ないとか言ってた気がするけど、意味がわからない。

「わからないかなぁ。aのこと、好きなんだけど。」
「へ?」

思わず気の抜けた声を出してしまった。
えーっと……、何だって?クリスが…………え?

「信じられない?じゃあ今度は一般的な表現方法を取ろうか?」

にやりと笑うとクリスは私を押し倒した。太ももを這う指が先程とは何かが違う事に、私は身の危険を感じた。

「わ、わかったから、クリス!だから止めて、ね?」

慌ててクリスを止めようとしたけれど、やっぱりというか何と言うか……、彼をどうにかしようとするのは難しいようで。

「今更止めたら男が廃るって言うか、愛しいaを目の前に止めれるわけがないって言うか……、まあ諦めたら良いと思うよ。」
「ちょっと待っ……!」

いっそ清々しいくらいの笑みを浮かべた彼に唇を塞がれ、血だけじゃなくて本当に食べられちゃいそうです。









20090621
戻る

main
TOP

ALICE+