「最近ね……誰かに見られてるような気がするの……。」

目の前の彼女は溜息をついた。

「つけられてるような気もするし……。」
「マジっすか?!それってストーカーじゃないですか?
てかまさかグラハムさんじゃないでしょうね。」
「シャフト……お前は俺を一体なんだと思っているんだ……?これは悲しい話をしなくてはならないのか!?確かに俺はaを見ている事だってある!果たしてこれはストーカーだろうか!?aを見たらストーカーになるのか!?だったらaの事をもう見る事は出来ないのか!悲しい、悲しい話だ……!」

レンチを振り回しながら一人悲しい話を続けるグラハムさんを横目に俺は彼女に声を掛けた。

「家まで送りましょうか?一人じゃ危ないっすよ。」
「本当に?有難う!最近一人でいるのが怖くって……。」

視線を落として言う彼女は本当に精神的に参っているようだった。

守ってあげたい。

密かに恋心を抱いている彼女をそう思うのは当たり前の事だった。

「じゃあグラハムさん、俺aさんを送ってくるんで。」

いつの間にか解体作業に夢中になっていたので俺の声は届かなかったようだ。
……ま、いっか。折角二人っきりなのにグラハムさんに邪魔されたら嫌だしなぁ。


廃工場を出て、aさんの家へと向かった。


他愛のない話をして、笑って、何もない幸せな時が流れていたのに、人気のない道で、それは起こった。

「シャ、シャフトくんっ……!」
「……つけられてますね。」

不安そうに俺の服を掴んで来た彼女の手を握った。

「大丈夫です。aさんは俺が守りますから。」

そう言った時、彼女が嬉しそうに頬を染めたのは気のせいではないと信じたい。

「aさん、こっちへ!」

手を引き、走ると案の定後をついて来られた。近くの建物の影に隠れて奴が来るのを待ち、こっちに来た瞬間、胸倉を掴んで言った。

「俺のaさんに二度と近付くな!」
「ひ、ひぃ!」

俺の精一杯の威圧に怯んだ男は情けない悲鳴を上げて逃げて行った。
これでもう大丈夫かな……?

「あ、すみません!なんか勝手に『俺の』とか言っちゃって……。」

まぁ彼氏がいると思わせた方がストーカーは諦めるのかもしれないけど。

「ううん。有難う、シャフトくん。助かったわ。」

離していた手を再び繋ぎ、今度は抱き寄せた。俺の両腕に収まるaさんは思ってたより小さくて、柔らかくて、華奢で、……こんな例えはグラハムさんの影響なのかもしれないど、今にも壊れてしまいそうだった。

「シャ、シャフトくん……?」

驚いているような、困っているような、どちらとも取れないaさんの声が聞こえたけれど、離したくはなかった。

「aさん……俺が守りますから……ずっとそばに居ても良いですか……?」
「……うん……。」

小さな声で聞き取りにくかったけど、俺の服をぎゅっと握ってくれた彼女の手が嬉しかった。


愛してますよ、aさん。他の誰かに君を渡すなんて出来ない。
俺のものにする為に手段なんか選ばないくらいに愛してます。

他の個体を使って君の事を調べたり、君の後をつけたり、このシャフトという個体を好きになるよう仕向けたり……。

絶対俺のそばから離れたらダメですよ、aさん。









20090325
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