「っ……シャフト、苦しいよ……。」
俺の腕の中にいる彼女が声を上げた。声色からして怒っているわけではなさそうだし、彼女を離すつもりはない。
もっと、もっとだ。どうしたら満たされるのだろう。
俺は彼女を抱きしめる力を更に強くした。
「シャ、ム……どうかした、の?」
シャムと呼ばれ思わず体がピクリと反応した。この個体の名前であるシャフトではなく、支配しているシャムという名前で私を呼んだ彼女はもしかしたら私が考えている事に気が付いているのかもしれない。
「シャム……大丈夫、だよ。」
途切れ途切れに言葉を紡ぐのは、私が彼女をきつく抱きしめ過ぎているせいだろう。
どんなに強く抱きしめても、「私」が彼女を抱きしめているような感覚がしない。確かに彼女に触れている。だがこれは、この体は、「私」ではなく「シャフト」なのだ。抱きしめるという行為を選んで実行しているのは確かに私のはずなのに、触れているのはシャフトであると思うと私はこの支配下にある個体にさえ嫉妬を覚えそうだった。
他の個体にしても同様だ。
人間のように自分だけの体を持たない私は、一生彼女に触れる事は出来ないのだ。
「a……。」
彼女を呼ぶこの声すら私のものではない。
それでも私は私ではない声で彼女の名前を呼んで、私は私ではないこの体で彼女を抱きしめるしかないのだ。
彼女に触れたい、ただそれだけの願いなのに。
20130324
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