ふとベッドの中で目が覚めた。今何時だろうか。目も開けず、そんな事を考えた。この家の中にいる不法侵入者に悟られないように身動きをせずに。足音は消しているようだが気配までは消しきれていない。
エニスやチェスは無事だろうか。やはり俺を狙って来たんだろうか。

扉の開く音がして、この部屋に不法侵入者が入って来た。
どうしてやろうか。取り敢えず捕まえて…………ってあれ??
侵入者がベッドに乗ったらしくギシリとスプリングが鳴ったのと、俺が侵入者の正体に気が付いて飛び起きたのはほぼ同時だった。

「フィーロ!」
「うわっ!」

目の前に飛び込んで来たのは赤い髪の少女の満面の笑みだった。勢いよく体を起こしたフィーロは、少女との思わぬ顔の近さに顔を赤くして再びベッドに舞い戻った。
それに気付いているのかいないのか、少女はフィーロの顔を追って隣に寝転んだ。

「ごめんね、起こしちゃった?ま、暫くフィーロの寝顔を楽しんだ後、起こすつもりだったんだけどね!」
「……何だよa……こんな時間に。」

はぁ、と溜息をついて急過ぎる訪問者に聞いた。

「好きな人に会いに来るのに理由なんていらないわ!」
「……せめて時間は気にして欲しいんだが。」

改めて時計を見ると夜中の3時を過ぎたところだった。

「だってお兄ちゃんが会いたいって思った時は会いに行けって!」
「……クレアめ……。」

彼女の名前はa・スタンフィールド。兄は勿論クレア・スタンフィールド。二人とも俺の幼なじみだ。お兄ちゃんっ子のaは小さな頃からクレアの後を着いて行く仲の良い兄妹だった。たった二人の血の繋がった兄妹だから当たり前なのかもしれないが。

「……で?何の用だったんだ?」

このまま二人でベッドに横になってては何かとイケナイので、上半身だけ起こして聞いた。
ああもう今日は寝れないだろうなぁ……。

「今日ね、お兄ちゃんシャーネさんとデートだったの。」
「……はあ。」

クレアが惚気に来るならわかる。だが妹がそんな話をし出すとは思わず、気の抜けた返事をしてしまった。

「私、シャーネさん大好きだから早く結婚してお義姉さんになって欲しいのよね。だからその日の中にお兄ちゃんが帰って来たから、何で朝帰りじゃないんだー!って喧嘩になっちゃって。それで来るのがこんな時間になっちゃったんだけど。」
「…………。」

スタンフィールド兄妹は仲が良い。だが、二人はよく喧嘩もする。ほら、喧嘩するほど仲が良いってやつだ。
……ただ、二人の喧嘩はハンパない。aもクレアと一緒にサーカス団に居た頃があり、クレア程でないにしろ、アクロバットが得意だ。喧嘩する二人の動きはそこらへんのショーより凄かった。流石にクレアも妹には手加減していたようだが、近くで見ようとするととばっちりを受け、ただではすまなくなる……。
半強制的に巻き込まれた幼い頃を思い出し、フィーロは言葉を失った。

「何だかんだでね、私羨ましかったんだと思うの。」
「何だ?aもシャーネに会いたかったのか?」
「そうじゃなくて!」

急に声を大きくしたaに驚いてたじろいだ。かと思えば急にしおらしくなり、頬を染めて言った。

「お兄ちゃんも婚約者見付けたわけだし、……その、私達も結婚しようよ。」

さっきも言ったが、aは幼なじみだ。別に付き合ってるわけではない。流石クレアの妹、と言うべきか……。昔は驚いてあわてふためいたりもしたけど、こう何回も言われると慣れてしまった。

「a……クレアの真似するのは止めといた方が良いと思うぞ。」
「何で?これでお兄ちゃんは婚約者が出来たし。それに私はフィーロにしか言ってないもん。」

確かに俺以外の人に「結婚しましょ!」とか言ってるのは見た事がない。ガンドール兄弟にもだ。本気で俺の事を好いてくれてるんだろうなと改めて思うと、今更ながら恥ずかしくなってきた。

「それに奥手なフィーロに任してたら話が進まないもん。」
「あのなぁ……。」

文句の一つでも言ってやろうかと紡ぎかけた言葉は口を柔らかいものに塞がれ、発する事は出来なかった。目の前の彼女にキスされたんだと気付くと顔が熱くなった。
俺今すっげぇ顔赤いんだろうなぁ……。

「フィーロ、結婚しよ!」

NOと言えないのはやっぱり俺もaの事が、好きなわけで……。でも今更どんな顔して言えば良いんだよ!

aみたいに素直に言えないけれど、その変わりに彼女の手を握った。









20090317
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