夜、日付が変わったのは何時間前だろうか。私はある人物の部屋のドアをノックした。こんな時間に訪ねるなんて非常識だという事はわかっている。相手が女性なら尚の事だ。
だが彼女と別れたのは数分前でまだ起きている事はわかっていたし、何より心配だったのだ。
ドアを開けると彼女は立ったまま私に背を向けていた。
「aさん……。」
彼女が振り返って地面を蹴るのは一瞬で、そのまま私は押し倒され、彼女の左手に銃が握られているのが視界の隅に見えた。
撃たれる。
そう思ったのと左肩に激痛が走ったのは同時だった。
「っ……!」
銃は左肩に当てられたまま、私の頭に右手をのばしてきた。後少しで触れる、という所で手は止まった。
「……ねぇ、ラック……。右手で人を喰うって……どんな感じかなぁ……。」
数時間前に見た、フィーロが喰う映像が脳裏を過ぎった。
喰わなきゃ喰われてしまう。
人が喰われる記憶が新しすぎて、そう咄嗟に思うには十分だった。
私は右手をのばし…………彼女の頬に触れた。
「ラッ…ク……?」
彼女が困惑した表情をあらわにした。
「……泣かないで下さい。」
「泣いてなんかっ……!」
確かに泣いてはいなかった。でも私がそう言うと今にも泣き出しそうに目が潤んだ。きっと、我慢していたんだろう。
彼女はガンドール・ファミリーの用心棒として強く優秀だったが、その反面心はとても弱かった。
今私の目の前にある彼女の右手首には新しいのから古いのまで無数の切り傷があった。そしてこの傷はもう一生消えない事を私も彼女も知っている。
数時間前に私達は不老不死になってしまった。
そういえばいつの間にか肩の痛みもなくなっていた。
「私の前では無理をしないで下さい。」
私を喰う、と見せ掛けて……彼女は私に喰って欲しかったのだ。
でなければわざわざ左手で左肩を狙わないだろう。普通、右肩だ。
「だって…っ……ラック……私、怖いよ……。」
彼女の声は震えていた。
「もう、死ねないんだよ?生きてたくなんかない、のにっ……。」
ああもしかしたら彼女は私が来るまでに自傷行為をしていたのかもしれない。それを知る事はもう出来ないのだろうけど。
「怖いよ、ラック……。」
「大丈夫ですよ、aさん。私がそばにいます。ずっと、ずっとそばにいますから……。」
微笑むと彼女は少し安心したようだった。
「……本当に……?約束だよ、ラック……。」
そう言うと彼女は私の唇にキスを落とした。
永久に貴方と
20090314
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