それは偶然だった。
いつもは使わない道を仕事の取引先に向かう為に通ったから、本当に偶然。だから何の心構えも出来なかった。酷く驚いたように目を見開いたのは恐らくお互い様。
まさか昔付き合っていた人に出会うなんて……。

「……ラック。」
「……久しぶりですね、a。」

目が合ってしまっては気付かない振りをする事も目をそらす事も、お互い出来ない性分だった。でも出来れば話たくなんかなかったし、会いたくなんか……なかった。

「ラック私ね、今付き合ってる人がいるんだ。」

嘘じゃない、けど。私は自分を守る為にこの言葉を吐いた。

「そう、ですか……。」

彼は良かったと微笑んだけど、何処か悲しそうにも見えた。それは私の気のせいかもしれないけど、そうであって欲しいと望んでいる自分が嫌だ。

「……ラック、は……?」

そんな事を聞くのは嫌な女だというのはわかっていたけど、聞かずにはいられなかった。そしてある答えを切望して仕方なかった。

「私にはなかなか貴方以上の良い人が現れなくて、ね……。」

やった、良かった。……良かった。言葉の選び方はお世辞だとしても、ラックに新しい彼女が居なくて本当に良かった。

もしまだ私がラックの事を好きだと言ったら貴方は笑うかしら?呆れる?それとも軽蔑する?
別れてみてわかったの。貴方がどれだけ優しくて安らげて癒されて好きで愛おしくて愛していたのかを。今更気付くなんて馬鹿みたいでしょう?貴方の事を忘れようと色々な男と付き合ってみたけど全然ダメだった。
じゃあ素直にやり直したいと言ってしまえば良いのかもしれない。でもそれは変なプライドや意地が邪魔して言えない。

だって、別れたいって言ったのは私なんだもの……。

「そう……。早く良い人が現れると良いわね。」




「貴方が好き




20090625
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