あああああどうして!私はただニューヨークに行きたかっただけなのに!ちょっと奮発して、豪華列車の二等車両なんかに乗ったのがいけなかったの?!どうして。どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!どうして皆血を流して死んでいるの?!どうして誰も生きていないの?!……いや、どうして生きているのは化け物ばかりなの?!
私は走った。列車という逃げ場のない場所なのに、居ても立ってもいられなくて私は気が付けば走り出していた。
三等車両まで走った所で私は足を止めた。恐怖で足が竦んでしまったのだ。
私の視線の先にある部屋から血が、流れ出て来ていた。悲鳴を上げたくても恐怖のあまり声が出て来ない。でも私は結局悲鳴を上げる事となる。いつの間にか背後に立っていた人物に肩を叩かれたのを切っ掛けにして。
「いやあぁぁぁぁあぁぁぁっ!!」
勢いよく振り返ったそこには恐怖の対象の一つである黒服の男が立っていた。
「貴様、ここで何をしている。」
男の手には銃が握られていた。その銃口は私に向けられていて、もう私も殺されてしまうんだ、私も死んでしまうんだと思った。
恐怖のあまり目を瞑ったが、衝撃はいつまで経ってもやって来なかった。不思議に思って恐る恐る目を開けると、いつの間にか黒服の男は姿を消していた。驚愕した瞬間、後ろから声を掛けられた。
「黒服は俺が倒した。」
再び勢いよく振り返ると全身真っ赤な何がそこに立っていた。
まさか、と思いつつも私はそれがそうだと理解してしまった。
「……レイルト、レーサー……。」
一番会ってはならない者に出会ってしまった。今度こそ、殺される……!
「そんなに怖がらなくて良い。殺すつもりはない。……だから泣くな。」
「えっ……。」
そう言われて私は初めて自分が泣いている事に気が付いた。
一体いつから泣いていたのだろう。レイルトレーサーと目が合った時かも知れないし、黒服に銃口を向けられた時かも知れないし、もしかしたら走り始めた時にはもう泣いていたのかも知れない。
「俺が守ってやるから泣くな。」
そう言ってレイルトレーサーは涙を拭うように私の頬を撫でた。
今この目の前の化け物は何て言ったの……?私を、守る……?何故?理由がわからない。
……でもこんな味方が居れば最強かも知れない……。生きて、ニューヨーク迄行ける気がする。落ち着いてよく見ればちゃんと人間だ。赤いのは……きっと返り血で、……それがちょっと怖いけど。
涙はいつの間にか止まっていた。代わりにレイルトレーサーが頬を撫でたせいで少し赤く濡れたけど私は気付いていない。
「お前、名前は?」
「……a・b。」
「a、か。良い名だな。俺はクレア・スタンフィールド。」
クレアと呼んでくれと言う彼に、私はいつの間にか恐怖を感じなくなっていた。
次に発する彼の言葉に私は完全に彼を化け物だと思うのを止める事となる。
「a、俺と結婚しないか?」
私は目を見開いた。
非日常が日常になってしまった瞬間だった。
答えれば、もう戻れない
20090607
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