「a。」
優しく名前を呼ばれて優しく肩に手を乗せられ、振り返れば優しい笑みを浮かべた彼がそこに居た。
……私はそれが何より怖くて仕方ない。
「……なぁに、フェルメート。」
彼は答える事なく私を押し倒し、唇を重ねて来た。
私は彼とのキスがとても好きで、同時にとても恐ろしい……。
「んんんんっ……!!」
掴まれていた右手に激痛が走り、唇を塞がれている私は言葉にならない悲鳴を上げた。
見なくてもわかる。掌をナイフで刺されたんだ。そして恐ろしいスピードで傷が治って行った。
「痛いの好きだよね?」
そんなわけないじゃない。こんな事毎日続けてたら頭がどうにかなってしまいそうよ。
「フェルメート……。」
震えた小さな声で彼の名前を呼んだ。涙で滲んだ彼の顔はよくわからなかったけど、笑みを浮かべている事だけはわかった。
「僕から受ける痛みが好きなaが好きだよ。」
私もフェルメートの事が大好きだよ。
でも痛いの嫌いだし怖いよ、フェルメート。
こんなに痛い事をされても貴方を嫌いになれないのは、何故……?
……でもそれを声に出してまで否定出来ないのは、やっぱりそういう事なんでしょうか……?
これも愛の形……?
20090613
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