九月に入って夏も終わるはずなのに、この残暑の厳しさはなんだというのか。暑さでくらくらする。記録に残るくらいの暑い日々が続いた今年の夏、私はずっと長袖を着ていた。友人に見ただけで暑いから止めて、と言われても出来なかった。今年だけじゃない。私が長袖しか着なくなったのは何年前からだったろうか。彼に、フェルメートに会ってからだ。

「a。」

私の名前を呼んだ彼はこの暑さにも拘わらず汗一つかいていなかった。それが何だか彼の存在が嘘のようで、じんわりと汗ばむ私の存在が汚らわしいものであるような気がした。

「ああ、綺麗に傷痕が残っているね。」

何処か恍惚とした声で(表情はよくわからない)彼は袖をめくり私の腕に触れた。
私の両腕には無数の傷痕がある。古いものから新しいものまで、それは全て刃物による傷だ。これを他人が見れば自分でやった傷だと思うんだろう。リスカなんて今じゃ珍しくもない。でもこれは私がやったんじゃない。全てフェルメートがつけた傷なのだ。

「さあ、今日は何処に傷をつけてあげようか。」

傷は腕だけじゃなく、脚や背中、体中に広がっている。腕以外は切り傷の他に痣になっているものや火傷の痕、噛み傷なんかまである。
彼は私という玩具で遊んでいるのだ。「aは不死者じゃないから壊れないようにするのが大変だ」と微笑む彼の周りには不老不死の人間ばかり居るらしい。そんな作り話のような事を信じてしまったのは、彼が私の目の前で自分の首を掻っ切って見せたからだ。その後の彼が再生して行く様はまるで奇跡。
そんな彼が私に構う理由。それは私が普通の人間だから。傷が治ってしまう不死者達では無理な事を私に求めているのだ。

「ああやっぱりaには傷が似合うね。」

ぎりっと腕に彼の爪が食い込み、血が溢れ出た。

「綺麗だよ、a。」

貴方がそう褒めてくれるから私はこうやって痛みを受け入れてるんだよ?

「……フェルメート、好きよ。」

たとえこれがたった100年で消えてしまう想いだとしても。









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壱周年フリリクのフェルメート夢。つくさまリクエスト有難うございました!
20100903
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