気が付けば机の上に押し倒され、手首も拘束されて逃げられそうにもない状況になっていた。
「ろ、ロニー……?」
私の上に居る男の名前を呼んだ。
「ヤだ、ふざけないでよ!」
首筋に唇を落とし、ブラウスのボタンに手を掛けてきた彼はどうやら本気のようだ。
願いを叶える条件だったとはいえ、一応200年付き合っている私達はそういう経験だって何度もある。でも今は場所が場所だ。部屋の扉には鍵が掛かってるわけではないのでいつ誰かが入って来てもおかしくない。しかも此処はアルヴェアーレの一室だ。数十メートル先には皆が集まっている闇酒場があるのだ。そこには……マイザーだって居る。
「嫌だってばっ……!」
黙れと言うかのようにキスをされ、拒否の言葉も言わせてもらえなくなった。
今までこんな無理矢理してこようとした事なかったのに……!
ぐるぐると頭が混乱している所に恐れていた事が起こった。
コンコン、と扉をノックする音が響いた。
慌ててより一層抵抗を強めてみるものの、ロニーはびくともしなかった。
返事をしなかったが、人が居る気配を感じたのか扉越しに声を掛けられた。
「ロニー、居るんですか?」
マイザーだ。
彼にだけはこんな所見られたくない。お願いロニー、止めて、止めて止めて止めて止めて!
私の願いも虚しく、扉が開いた。ただ、その扉はマイザーが開けたようには見えなかった。普通に考えれば有り得ない事なのだが、扉が勝手に開いたように見えたのだ。
目の前の男を見上げれば、やっと離した唇の口角を上げた。それも一瞬の事で、今度は少し不機嫌そうに口を開いた。
「マイザー、俺は今取り込み中なんだが。」
「……そのようですね。でも頭領が探してましたから行った方が良いんじゃないですか?」
「……そうか。なら仕方ないな。a、俺が戻って来るまで待ってろよ。」
ちゅっと額にキスを落とすとロニーは出て行き、私は乱れた服を整えた。マイザーと二人きりになり気まずい雰囲気が流れる中、先に口を開いたのは彼の方だった。
「邪魔してしまったようですね、すみません。」
「う、ううん!私はこんなとこでしたくなかったのにロニーが……。」
ってああマイザーに何言ってるんだろう。
私が本当に嫌がる事はしないロニーが、今回こんな行動に出たのは何故なのかもう予測がついている。マイザーがこっちに来るのがわかってたからだ。マイザーの事を忘れられない私にわからせる為に、彼との関係をぎくしゃくさせたかったんだと思う。
そして言いたかったんだろう。お前は俺のものだと……。
「すみません、a。もしかしたら……私のせいかもしれません。」
「えっ?」
そう言ったのは勿論マイザーで、意外な謝罪に私は目を見開いた。
「きっと私に見せ付けたかったんでしょう。ロニーは私の気持ちを知ってるでしょうから。」
え……それってどういう……。
「私がaの事を好いているのが気に食わないんでしょうね。」
目の前が、真っ白になった。マイザーが……私の事を、好き……?
まさか……嘘でしょ……?そんな事って……!
200年もずっと秘めていた思いが溢れて来る。
「私が、私が好きなのはっ……!」
息が出来なくなるように言葉が出て来ない。これ以上は言えない。
「……私が好きなのは……ロニーだよ……。」
「……わかってますよ。」
わかってない。全然わかってないよ。
「急に変な事言ってすみませんでした。今のは忘れて下さい。」
マイザーは部屋から出て行った。姿が見えなくなった途端、私の両目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。
200年もの間聞きたかったけど、聞きたくなかった言葉……。早く、早く忘れなきゃ。彼を思うこの気持ちを早く忘れてしまわないとどうにかなってしまいそうだ。早く忘れさせてよ、悪魔。今もどうせ何処からか見てるんでしょ?私を愛していると言うのなら、もう泣かなくてもいいようにして……!
彼女の涙は悪魔のみぞ知る
20090424
戻る
main
TOP
ALICE+