夜のアルヴェアーレで一人酒をする女がいた。酒を飲み過ぎたのか、酒に弱いのか、大分酔っ払っているようでテーブルに伏せっていた。だからと言って寝ているわけではなく、視線はある男を追っていた。
暫くするとその男が視線に気が付いたのか、女の方にやって来た。
「a、少し飲み過ぎじゃありませんか?」
「マイザー……。」
マイザーと呼ばれた男は女の……aの密かな思い人だ。この事を知っているのはaの彼氏であるロニーだけで、もう恐らく誰にも言う事はないだろう。
マイザーへの気持ちについてa本人は見ているだけで良いと言っているが、本心はそうではない事もロニーは知っている。
「マイザーも一緒に飲まない?」
「まだ飲むんですか?珍しいですね、そんなに飲むのは。どうかしたんですか?」
「……別に。何があったとかいうわけじゃないけど……。」
言葉にすら出来ない思いはぐちゃぐちゃと心の中で暴れ出しそうになり、たまにこうやって酒でも飲まないとやってられなくなる時がある。
「さあ、もう飲むのは止めて。家に帰った方が良いですよ。」
「……わかったわ。」
マイザーは家に帰る事を了承してくれたのだと思ったのだが、aはそんなつもりで答えたわけではなかった。マイザーが一緒に飲んではくれないのだと、理解しただけだ。
じゃあ向こうに居るアイザックとミリアと一緒に飲もう。陽気な彼らと一緒に飲めばこの陰鬱な気持ちもマシになるかもしれない。
そう思って立ち上がったが、酔いが思っていたより足にきていたようで、ふらついたaをマイザーが支えるという形になってしまった。
「大丈夫ですか?」
「あ……有難う……。」
何時もならすぐ離れるものの、思わぬマイザーの温もりに目を閉じて、少しだけ彼に体を預けた。
……良いよね……。少しくらい良いよね……。
不意に抱きしめられ、aは驚いて目を開けた。
更に驚いた事に抱きしめたのはマイザーではなく、どんな力を使って入れ代わったのか彼氏であるロニーだった。
「ロニー……?!」
「aは俺が送って行く。」
ロニーはいつの間にかaの後ろに移動していたマイザーに言った。
「……そうですね、ロニーに任せた方が良いみたいですね。」
ロニーが彼女を抱きしめながら言ったのは、aは俺のものだと言いたかっただけで、マイザーもそれをわかっていた。
「a、もう少しで仕事が終わるからそれまで待っていてくれ。」
「良いわよ、別に送ってくれなくても……。」
「送らせろ。」
そう言いながらロニーは酔いで少し赤くなったaの頬を愛おしそうに撫でた。そしてロニーの顔が近付いて来て、キスされるんだと彼女が思った瞬間、手が勝手に彼の唇を押さえてしまった。
……キスを拒んでしまった。ロニーとキスをするのなんて当たり前の事になっていたのに……これも酔っているせいなのだろうか。
彼女自身でも驚いているとその手を取られ、今度こそ唇を塞がれてしまった。最初は軽いキスをする予定だったんだろう。だが実際にされたのは、舌を絡めとられ息も出来ないくらいの長い長いキスだった。拒否してしまった事できっとロニーを怒らせてしまったんだろう。足に力が入らないのはお酒のせいだけではなくなってしまった。崩れ落ちそうになった体を支えるロニーの手の力が更に強くなった所で、やっと唇が離された。
息も整わぬ内にaはロニーの胸元に顔を埋めた。ロニーが愛おしくてだとか、人前で恥ずかしくてだとかいうわけではなく、……後者はなくもないが、近くに居るマイザーの顔を見たくなかったのだ。ロニーもそれはわかっていて、そこには確かにどろどろとした何かがあるのに当事者の二人以外は誰も知らない。
ロニーがaに心底惚れているのは誰もが知っている事実で、それははたから見たらただいちゃついてるようにしか見えず、ランディとペッチョにあたってはからかいの言葉まで投げ掛けて来た。それを気にせずaの耳元で囁いたロニーの言葉は鎖の如く彼女を縛った。
「お前は俺のものだ。」
それがただの甘い言葉にならないのは二人しか知らない真実。
二人以外誰も知らない
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2000hitキリリクのロニー夢。乃亜さまリクエスト有難うございました!
20090612
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