溢れる想い



疲れた。今日は朝から現在の日付変わるギリギリの時間まで、ずっと仕事だった。仕事は楽しいし仕事貰えるだけありがたいんだけどさすがに疲れました。

しかもタクシー捕まらなかったし歩きなのでそこで更に疲れる。まあ家まで徒歩10分程度だからタクシーじゃなくて歩けよって話なんだけど。




「わっ、」

『きゃっ!』

「すみません!大丈夫ですか?」

『あっ、大丈夫です。こちらこそすみませんでした。失礼します。』



曲がり角を曲がるとき、前を見ていなかった僕の不注意で、前方から来た女性の方とぶつかってしまった。しかし、彼女はすぐに立ち上がり、スラスラと言葉を述べて風のように去っていった。大丈夫かな結構な勢いで尻もちついてたけど。



「ん?」



彼女が尻もちをついたところに、落ちていたものを拾う。見ると先程の彼女の顔写真が載っていたから絶対彼女の落とし物だ。社員証?みょうじ、なまえさん、かー。

どうしよう、これないとみょうじさん困るよね。でもいま夜だしきっと仕事終わって帰ってきたところだから会社に行ってもいないだろうし・・・。どうしよう。



考えに考え抜いた末、交番に届けることも思いついたが僕が直接届けた方が早いと思い、家に持ち帰ることにした。社員証にどこの会社か書いててよかった。僕の家からも近いし。でも僕、明日9時から仕事だけど、大丈夫かな。それまでに出勤してくれたらいいんだけど・・・。











朝7時。まだ外は冷える。お気に入りのコーヒー屋さんはまだ開いてなかったから、最寄りのコンビニでホットコーヒーを買い、みょうじさんの会社の前でコーヒーを飲みながら待つ。

みょうじさんの会社は大きい会社なのでこんな朝早いにも関わらず人が多く出入りするから常に目を凝らして見なければならない。

そんなこんなであっという間に時刻は8時。仕事現場までの移動時間を考えてタイムリミットまであと30分。もしかして今日休みなのかな?出勤時間遅い日なのかな。って不安になる。もし会えなかったら・・・。会社に預けて行くしかないか、

その時、僕の傍を横切る人の顔は見えなかったが、妙に惹き付けられるものがあり、確信はなかったが声をかけてしまった。



『あ、昨日の・・・?』

「よかった。昨日ぶつかったものです。あのあと大丈夫でしたか?」

『全然大丈夫です。・・・では、』

「あ、これ!」

『!これ私のです!昨日落としてました?』

「はい」

『探していたんです!ありがとうございます!』

「いえいえ、」

『もしかしてこのために来てくれたんですか?!すみませんでした!寒いなかほんとにすみません!待ちましたか?全然警察に届けてくださっても、落としたまま放置でもよかったのに、すみませんほんとに』

「ふはっ、一気に言い過ぎ・謝りすぎ」

『すみません』

「また謝った」

『あ、』

「おもしろいねみょうじさんは」

『え、なまえ、』

「社員証」

『あ、』

「ふふっ、なに?天然?かわいい。僕は片寄涼太です。」

『片寄さん』

「涼太でいいですよ。僕もなまえさんでいいですか?」

『あ、はい。涼太、さん』

「はい。・・あ、そろそろ時間だ。僕行きますね」

『本当にありがとうございました!あのこれ!まだ口つけてないですしまだ温かいと思います!好みじゃないかもですが、お礼です!』

「お、ありがとう。またねなまえさん」



なまえさんがくれたのは朝まだ開店していなかった僕のお気に入りのコーヒー屋さんの、僕の一番お気に入りのコーヒー。コーヒーといっても種類は何十種類もあるのにドストライク。すごい、











最初から社員証はなまえさんの会社の受付に預けたら済んだ話だ。でもそれをしなかった理由はただ単にもう一度なまえさんに会いたかったから。なんで会いたかったかは理由ははっきりしてなくて悩んだ時、極めつけになまえさんがくれたコーヒーの件で確信した。
隼が貸してくれた少女漫画を最近読んだせいかな。なまえさんに運命感じちゃってるんです僕。








ここまでが1ヶ月前のお話。あれから色々となまえちゃんの情報は入って来た、というか僕が聞いた。(僕の事務所となまえちゃんの会社に繋がりがあり、しかもなまえちゃんが事務所に営業しに来ることもあったそう。またまた運命感じた瞬間)

なまえちゃんは僕よりひとつ年下。いまは東京で一人暮らし中。彼氏なし。

僕はなまえちゃんに会いに何度か会社まで会いに行くようになった。事務所になまえちゃんが営業をしに来る時は、僕が裏で繋がっている事務所の方になまえちゃんが来ることを教えてもらい、なるべくその日は事務所に入り浸り、なまえちゃんに会えるようにしていた。

そんな僕はなまえちゃんから確実にやばい人だと思われてたと思う。だから僕に対して口調も少し厳しくなった。でもそれは逆に変な気を使わなくなったから話しやすくなったとも言える。

そして僕はここ1週間前くらいからなまえちゃんとの別れ際に告白をすることにしてる。最初は特に意味はなく、ただ僕の想いが爆発しちゃっただけだった。でもそれを言ったあとのなまえちゃんの顔。真っ赤になった顔を隠すのに必死で、『さよなら!』と僕の顔を見ずに慌てた様子で去ったのだ。

全然脈ナシだと思っていたのに、この反応を見て可能性を感じたし、なによりまたあの顔が見たいという僕の内に秘めたSっ気が出てきてしまった。期待通り毎日顔を真っ赤にしてくれるし、とってもかわいいんです。

そして僕は今日も、ライブ終わりになまえちゃんの会社に寄って、会社の前でこいぬのように健気に待ちます。



「なまえちゃんっ」

『涼太くん、』

「おつかれ〜」

『何してるんですか、今日ライブじゃなかったでしたっけ?』



そうそう。そういえばなまえちゃんLDH系のグループに詳しくないらしい。GENERATIONSのことは全く知ってくれていなかったし、EXILEのことも名前は聞いたことある。程度だった。事務所に営業に来てるのに。テレビを全然見ないと有名人とか全く知らないんだなーと感心した。

そこで僕はGENERATIONSに興味を持ってもらって僕をもっと知ってもらって、願うなら僕だけを頭にインプットしてほしくて、アルバム・CD・DVD全部あげた。こんなに僕のこと知って欲しいと思ったことはなまえちゃんに出会うまでは一度もなかった。

僕はなまえちゃんに好かれたくてこんなことまでしてるんだと冷静になったら苦笑するけれど、でもなまえちゃんが好きだからやってしまう。運命の出会いって人も変えるんだと初めて知った。



「なにって、なまえちゃんを待ってた」

『待ち伏せですよね、それなんていうか知ってます?』

「なんでしょう?」

『ス・ト・ー・カ・ー』

「人聞きが悪いな〜」

『なんでいつも来るんですか』

「なんでっていつも言ってるじゃん。また聞きたい?」

『、いいです!帰ります!』



去っていこうとするなまえちゃんの手首をつかみ、引き止めると、なまえちゃんが一瞬こちらを向いた。そのタイミングでぐっと僕の方まで引き寄せ、なまえちゃんの耳元でできる限り低い甘い声で囁く。



「なまえのこと、好きだよ」



そうすれば、ほら。かわいい顔がまた真っ赤になる。いつもならここで去っていくんだけど今日は僕が手首を掴んじゃってるから去れないらしい。振りほどこうとするけど僕が離す気がないと分かれば、空いてる方の手で真っ赤な顔を一生懸命隠す。ほんと、いちいちかわいいなあ



「ねえ」

『なに』

「ほんとはさ、もうとっくに僕に落ちてるでしょ」

『、おちてない』

「うそ」

『おちてない』

「素直になりなよ」

『落ちてない』

「うんうん、落ちてないね?落ちてない」



素直に認める気はないらしい。だから今日は僕が折れて、そのままなまえちゃんの手首を引いて僕の胸に顔を引き寄せ、頭をポンポンする。

そのなまえちゃんの表情、絶対落ちてるのにな〜。自惚れじゃなく、本気で誰が見ても僕に対して惚けてるって顔。



「いつ素直になってくれる?」

『うるさい、離して』

「僕のことすき?」

『すきじゃない』

「いつから好きになった?」

『・・、好きになってない!』

「なまえちゃん、ちょっといま考えてたでしょ〜?」

『もー!帰る、』

「帰るなら家の前まで送らせて?夜だし、危ないし」

『大丈夫です。ご迷惑をかけられませんので』

「僕が大丈夫じゃないの。なまえちゃんが心配。」

『・・・勝手に、してください』



そう言ってなまえちゃんは先に歩き出した。僕はその場で突っ立っていると、なまえちゃんは立ち止まり振り向いてまた歩き出す。

なんだよ。勝手にしろって言ったくせに僕がちゃんと付いてきてるか確認したの?そんなの、かわいすぎるから勢いよく走っていってなまえちゃんの後ろ姿に飛びつき、そのまま首元に手を回して後ろから抱きしめたまま歩く。なまえちゃんは『苦しい』『歩きにくい』って言うけど本気で振りほどこうとしないし、ほんとは嬉しいんだよね?って調子のいい僕は勝手に思っとく。

とんでもなく素直じゃないし、あまのじゃくな僕のすきなひと。これからはもっともっと攻めて絶対好きって言わせてやる。











リクエストありがとうございました!涼太くん、草食系男子っぽい見た目ですが、実は想い人にはガツガツ行くタイプだと私も思っていました!なのでスラスラと肉食系涼太くんがかけました!ご希望に添えられたら嬉しいです。