Thank you for everything !
【佐伯】
「ごめんね、今日は時間作ってもらって」
待ち合わせ場所に少し早めに着いたのでベンチに座って待っていれば、不意に横から声と同じくらい爽やかにやってきて、そう言う彼に大丈夫だと笑う。はい、と差し出された紙カップは近くの珈琲ショップでわざわざ買ってきてくれたのだろうか。お礼と共に受け取るとじんわりと手の平に温かさが広がる。暑かったと思えばまた肌寒くなった今の時期にこのカップの温かさは有難い。両手で抱えて暖を取っていれば、はい、と私の隣に腰掛けた佐伯が、徐ろに膝に何かを載せる。
「先に渡すか悩んだけど、今日の一番の目的だしね」
「わ、可愛い!」
春らしく華やかな色合いの小さい紙袋に思わず笑顔になる。中を見てもいいかという意味を込めて再び佐伯を見れば、目線だけでどうぞと促される。カップを自分の横に置いてから、そわそわと中を確認すると透かし箱に入った色鮮やかな飴の数々。
あれ、ホワイトデーに飴を渡すって。
顔を上げれば、膝の上で両肘を立てて両手を口元の前で組む佐伯が、少し意地の悪い笑みを浮かべて私を見ていた。
「あれ?もしかして“意味”、知ってる?」
「っ、〜〜!そうやってからかうの、勘違いさせるからやめなよ……」
「勘違いじゃないよ」
「え?」
「“君の事が好きなんだ”って、ひと月前から渡そうと思ってたよ」
真っ直ぐな眼から、多分もう逃げられないんだろうななんて思った。
―――キャンディ:「君のことが好きなんだ」
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