Thank you for everything !
【木更津亮】

「はいこれ」
チャイムが鳴って来客なんて珍しいとインターホンで出れば、立っていたのはクラスメートの木更津くんで、今日という日も相まって全速力で玄関に向かえばいつもと変わらない軽い感じで彼が立っていて、そして冒頭の言葉である。差し出された物の中を覗き見れば、バームクーヘンといえばと言われる人気店のバームクーヘンの箱。これ美味しいんだよな、なんて思っていたら顔に出ていたのか木更津くんが、好きなら良かったよ、と息をついた。
……確かに好きだけどね、バームクーヘン。美味しいもん。でも今日はキャンディのが嬉しかったかも、なんて思う。いや、もしかしたら木更津くんそういう意味とか知らなくて家族で食べれるようにって気を利かせてくれたのかもしれないし、と自分に言い聞かせながらありがとうと受け取れば、彼が未だ紙袋を手放さないので伏せてた目を上げる。
「バームクーヘンって、いくつもの層が重なってるでしょ」
「う、うん?そう、だね……?」
「それを時間を積み重ねるってのにかけて、“この幸せが長く続くように”って意味があるんだって」
だから結婚式の引き出物とかにも使われるらしいよ、とニィと口角を上げて笑う木更津くんに、顔が火を吹きそうなくらいに熱くなるのを感じた。


―――バームクーヘン:「この幸せが長く続くといいな」


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