Short Short

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記念写真(財前)

「写真撮らへん?」
そう声を掛けた私の声は震えてないやろか、と少しの不安を打ち払うように笑顔を作る。目の前にいる後輩は、何言っとるん、とでも言いたげに真顔で見つめてきて、いつもと変わらぬ態度に今度は心から笑みが零れる。いつも通りな反応が、こっちもいつも通りに話せてると分かるから。
「明日卒業やもん、記念に。なっ?」
小首を傾げて顔を覗き込めば、彼はため息と共に視線を私から外す。テニス部部長になってから大分、いやかなりハジけたとはいえ、基本の面倒臭がりな所は変わっていないからきっと断られるやろな。答えは分かっていても悲しいもんは悲しい。せやけど言わなかったらもっと悲しくて後悔するから。あかん泣きそう。
「えぇですよ」
「やっぱりあかんかぁ…………え?」
「いやなんで断られる前提やねん」
アホちゃいますか、と肩を竦めながらスマホをいじる財前に、私は思わぬ返事に只々オロオロとするだけだ。ホンマに?ホンマにツーショ撮ってくれるん?
「え、ツーショやで?」
「俺だけ撮る言われたら断りますわ」
「それはそれで、あ嘘ツーショ、ツーショがいいですぅ!」
踵を返して教室を出てこうとする財前を慌てて捕まえて、スカートからスマホを取り出す。呆れたように、最初からそうして下さいよ、と息付く財前が私の左隣に寄り添うように立つ。心臓が、バクバクいっとる。嬉しい、アカンニヤける。
ほな撮るよ、とスマホを持ち上げて、目の前のカメラを見る。
「先輩」
「何ー?あ、5秒タイマーな」
「別に、卒業とか理由無くても明日も明後日も、来月でも来年でも、先輩となら写真撮ったりますよ」
「え」
私が財前を見るのと同時に、自撮りアプリのシャッター音が鳴る。財前が、正面のスマホから私へと視線を移して小さく笑う。
「先輩とおったら毎日記念日みたいなもんやろ」
涙は明日に取っといた方がええんちゃいます?なんて私の頭を撫でる手が優しくて、夢かと思って自分の頬を思い切りつねったらめちゃくちゃ痛くて笑えてきた。



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