よっと小さく声を上げて抱える荷物を持ち直す。
束になった紙と言うものは随分と重みを増すものだ。授業終わりに教師に頼まれて行ってみたら授業とも、ましてや自分とも全く関係ないプリントを運ばされるとはどういったことだろうか。
しかもこれ、相当重い。そんなに力が無い女子では無くともこれは重い。あの教師を恨みつつも、プリントを再度抱え直して歩き始める。
「随分と重そうじゃき」
「…仁王くん?」
大量のプリントの所為で姿を確認出来ないが、声からクラスメートだろうと推測する。が、如何せん特別親しい訳でもないクラスメートの事を、顔を見ずに確信持って名前を呼べる程の自信が名字には無く、問い掛けると笑い声が返ってきた。
「何で疑問系ぜよ」
「や、姿見えなくて」
ごめん、と名字が小さく謝ると不意に腕が軽くなった。プリントが半分以下の量になっているのに気付いて仁王の顔を見上げると、彼はどこ吹く風という様に歩き始めてしまう。慌てて後を追い掛けると、ぽつりと仁王が口を開く。
「升田はのぅ、」
「えっと、升田先生?」
「あぁ。升田は、気に入った女生徒を自分の所に呼ぶために何かしら理由をつけて呼びつけるんじゃ」
「え、」
「しかも到底一人じゃ難しいような内容をな」
「何でわざわざ…」
「自分を頼ってほしいんじゃろ。まっ、報われとらんがな」
淡々と話す仁王に名字は苦笑を漏らす。まさか、そんな意図が合ったとは微塵も考えなかったが、友人があの先生にいい顔をしなかった理由は分かった。しかし、それならそうと言って欲しかった。
そう考えて、ふと顔を上げる。その様子に気付いた仁王が足を止め振り返る。
「どうしたんじゃ」
「仁王くん、もしかしてそれを教えに?」
「.......名字はそういう話に疎そうだしなぁ。実際升田のボディタッチとかも気付いとらんじゃろ?」
「うっ。……ボディタッチ激しいなぁくらいにしか……」
「アイツ変態じゃき、気をつけた方がいいぜよ」
そう言って再び歩き始める仁王をぽかんと見つめる。友人にも言わず(というより気付かれず)、一人で教師の元へ向かったのを見ていたのだろうか。そして、今こうしてプリントを運ぶのを手伝ってくれている。
何だか嬉しくなって、先を行く仁王の後を軽い足取りで追い掛ける。
「ありがとね」
「急になんじゃ」
「仁王くんは優しいなぁ。いっつも女の子達に教えてるの?」
「まさか」
「え?」
「……プリッ」
「……それ何語?」
何でもないき、と少し早足で行く仁王が照れ臭そうに頭をかくのを見て、名字は小さく笑った。
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気になるから助けたい。
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