日曜、誕生日のサプライズ


誕生日は特別な日。
しかしそれが、日曜日で、彼女がいない中学生男子にはちょっと寂しい日になる。

(…なんや、白石か)

午前10時47分。目が覚めてからやっときたメールはクラスメートで自身の所属する部活の部長からだった。思えば、今日という日を迎えた午前0時に誕生日を祝うメールやラインは男からしか来なかったな、とぼんやり考える。
馴れた手つきでメールを開くと、誕生日を祝ってやるから今から来いという内容だった。なんで上から目線やねん、とツッコミながらも顔が緩んでいく。
布団から起き上がり、白石に、今から行くと用件だけメールを送って、手早く着替えると、軽快な足取りで部屋を後にした。





────……

待ち合わせの駅に来てみると、見知った顔は何処にもなく目を丸くする。受信メールをもう一度確認するが、やはり待ち合わせは此処で合っているようだ。騙されたのか、はたまた遅刻しているのか。

(呼び出しといて遅刻すんなっちゅー話や)

大きく溜め息を吐き、改札口前の広告にもたれ掛かる。行き交う人達を見て、彼等は何処へと向かうのだろうと考える。目の前を仲むつまじく通り過ぎる老夫婦に、自然と笑みが零れた。誰かが幸せそうにしているのは何だか嬉しいものだ。それが自分の誕生日なのだから、良いことがあるような気がしてくる。
但し、若いカップルがリア充しているのはムカつくが。


「謙也先輩っ、」
「あん?」


不意に名前を呼ばれ其方を見れば、見覚えのある顔が僅かに息を切らせて立っていた。


「名前ちゃん…?」


ぽつりと名前を呼べば、乱れた呼吸を整えてから嬉しそうに笑った。
可愛らしいワンピースに春物のジャケット姿の彼女に、一瞬戸惑う。


「名前、可愛ぇやろ?謙也くん」
「うぉあ!……何やねん友香里ちゃんやんけ!急に後ろから現れんなや!!」
「俺もおるで」


名前のいるのと逆の方から、メールの差出人とその妹が現れる。妹の友香里がニヤニヤと謙也の顔を覗き込み、その後ろで同じようにニヤニヤしている白石に若干いらっとするが、視線を名前に移してもう一度彼女を見つめる。
名前は友香里の友達だ。謙也とは白石宅で会って以来、学校で見かければ挨拶を交わす程度の、所謂顔見知りである。その名前が何故、この場にいるのだろうか。偶然だとすれば、もしかしなくとも今日祝ってくれるのは白石兄妹だけなのだろうか。そうだとしたら泣けてくる。


「言っとくけど、俺らだけやないで?名前ちゃんも一緒や」
「へ、え?名前ちゃんも?」
「あかんですか…?」
「やっ、そんな事ない!むしろ嬉しい!!」


素直にそう伝えると、名前は安心したように息を吐く。
てっきり部活仲間が祝ってくれるのだと思っていたのだが、白石の口振りからするに、今日はこの4人で行動するようだ。するとやはり、何故名前が一緒なのか、という疑問が残る。首を傾げると友香里が、名前が謙也くんのお祝いしたいんやて、と耳打ちする。恥ずかしそうに俯く名前を見て、謙也も何だか気恥ずかしくなり彼女から目を逸らした。


「あ、あの、謙也先輩」
「ん、ん?どないしたん?」
「今日は誕生日おめでとうございます」


突然の事にきょとんとしていると、小さく名前が笑った。きっと謙也の後ろでは白石兄妹がムカつく顔で笑っているのだろう。けれどこのサプライズは普通に嬉しい。恐らく自身を慕ってくれている女の子が祝ってくれるのだから。


「おおきにっ!」


満面の笑みでそう告げると、名前の顔が一気に真っ赤になり、再び俯いてしまった。



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「………あれ?」
「謙也くん天然タラシやな」
「謙也へたれなんやけどな」
「おいこら白石兄妹!どういう事やっ!」
(謙也先輩カッコいいよぅ…!)