眉間にシワを寄せて、彼女はヌイグルミとにらめっこしていた。────正しくは、UFOキャッチャーのガラスケースの中のヌイグルミと、だが。
「欲しいのになー……。何で取れないのかなぁ」
ため息を吐きながら、ふと人の気配を感じて横を見ると、彼女から見て横のガラスケースの向こうに、人がいた。
「うわぁ!」
「ハハッ!樹っちゃんが驚かせちゃったかな?」
驚いてガラスケースから離れると笑い声が聞こえてきた。声の方を見ると、いつの間にか彼女の横には学校で有名な佐伯が立っていた。佐伯をぼんやり見つめた後、改めてガラスケースの向こうを見ると、中を真剣に覗き込んでいたのはクラスメイトの樹だった。
「い、樹くん…?」
「……………」
「無理だよ、樹っちゃん真剣だから」
確かに真剣に中を覗きながら、佐伯のいるボタンがある場所と横とを行ったり来たりしている。呆然と見ていると、ついに樹がボタンを迷いなく押し、アームがしっかりとヌイグルミを掴んだ。
「す、凄い凄い!」
取り出し口からヌイグルミを取る樹に感動で拍手を送ると、少し間を置いてから樹はヌイグルミを彼女に差し出す。
「良かったら、コレあげるのねー」
褒められたのが嬉しくて、照れたように笑って樹が差し出したヌイグルミ。
それは―――…
「ホントに!?この子、スッゴイ欲しかったの!」
「え、」
「もー、大切にする!ありがとう樹くん!」
「――――どういたしましてっ」
(こんな恋の始まりもアリかもしれない)
今だにほのぼのとしている二人を見て、佐伯はそう思った。
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