ご時世ネタ【ジロー】


【ジロー】

「ねね、両手を広げてー!」
日常でマスクをしている事にも慣れてきたこのご時世。クラスメートの芥川くんの突然の発言に目をぱちくりとさせていると、早く!と急かされる。彼の不織布マスクは『密です!』と描かれた小さな缶バッチがついていて(可愛いか)、確か幼馴染だと言っていたテニス部の人も似たようなマスク缶バッチをつけていたと、友達が話していた気がする。そんな事を考えつつよく分からないまま両手を広げて立てば、そんな私の隣に同じように腕を広げて芥川くんが立つ。なんだなんだ、ダブルラリアットでもするのか。ネタが古いとか言わないで。訳が分からないと顔に思い切り出ていたのか、芥川くんは私を見るとへへっと笑った(可愛い)。
「ソーシャルディスタンスー」
可愛いか?いや可愛いわ。んんっ、とクラスメートの可愛さに悶えていたら、ちょんと指先同士が触れる。
「……やっぱ、ちょっと遠いのさみCー……」
仕方ないんだけどねー、と眉を下げていつも通りの笑顔を見せる彼に、私も眉を下げた。
「私も、芥川くんの笑顔見れないの寂しいなぁ」
マスクはもっと仕方ないけどね、と笑えばきょとんとしていた彼が満面の笑みで、俺も!と答えた。マスクがあって良かったかもしれない。こんなの正面からマスク無しで食らったら何も手が付かなくなってた。