浜辺のジリジリした暑さに背中を汗が伝っていくのを感じながらも、名字は休むことなく歩く。流木を両手にしっかり持って、砂浜をずりずりと引きずっていく。
「何やってるの名前」
「あ、虎次郎」
後ろから声を掛けられ其方を振り返れば、少し離れたところで不思議そうに首を傾げる幼なじみの佐伯虎次郎の姿。部活が終わったのだろう、離れたところに彼の部活仲間達が手を振っている。
「はいこれ。熱中症対策」
そう言って差し出されたのは随分と汗をかいているスポーツドリンク。恐らく自分のために近くの自販機で買ってくれたのだろうと、嬉しくて笑顔になる。手渡そうと近付いた佐伯に、名字は笑顔のまま首を横に振った。
「あれ?飲めないっけこれ」
「ううん。今はまだいらない」
「ダメだよ。どうせ帽子も被らず此処にいたんだろう?水分は取らないと」
「うん、でももうちょっとだから。虎次郎近付いちゃやだよ?」
「え、」
ぽかんとしている佐伯に笑いかけてから、再び名字は流木を引きずって歩き始める。
「サエ!こっちだこっち!」
名字の意図が分からず呆然と立ち尽くしていると、防波堤の方にいた黒羽に呼ばれ顔を上げる。しかし名字を放ってはおけない、と彼女を振り返るが、黒羽だけでなく共にいた葵や天根、樹に木更津までもが自身を呼んでいるので、その場を離れ、防波堤へと向かう。
「何、どうしたの」
佐伯が着くと、全員が同時に防波堤の下を指差す。不思議に思いながらも其方に近付き覗き込むと、名字の姿と砂浜というキャンバスに書かれた文字。驚いて見つめていると終わったのか名字が顔を上げ、佐伯の方を見て笑った。
「すっごい愛の告白だね、サエさん」
羨ましいなぁ、と呟く葵の肩を叩く天根に小さく笑ってから視線を名字へと戻す。
『こじろうLOVE』と書かれた砂浜に満足気に仁王立ちしている名字に、佐伯は大きく、俺も好きだ、と彼女の名前を呼んだ。
お題「海辺の恋で5題」
(c)確かに恋だった
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