太陽が反射して輝く水平線を堤防から眺める。キラキラと眩しい穏やかな水面に思わず目を細める。
「名前」
呼ばれて振り返れば、幼なじみが両手にペットボトルを持ってゆっくりと近付いていて、名字は小さく笑って彼の名前を呼んだ。返事の代わりに投げられたペットボトルを慌てて空中でキャッチすれば、冷えたそれの水滴が顔に跳ねて思わず目を閉じた。
「ナイスキャッチ!」
「じゃないよ亮のばか、危ないでしょ」
頬を膨らませれば、彼は帽子のつばを軽く上げて笑った。その反応がまた名字は気に入らなくて、ふいとそっぽを向いて堤防に腰掛けるとキャッチしたペットボトルを開ける。すると勢い良く溢れてきた中身に、うわわっと間抜けな声が出て慌てて体からペットボトルを引き離すと、後ろからは先程よりも大きな笑い声が聞こえてきた。
「りょーうー……!」
「サイダーって、気付かないもんだから、ハハッ!」
「笑うなぁ!!」
堤防に座り込んだまま真っ赤になって怒る名字へと近付いて右隣に腰掛ける。貸して、と木更津が手を出して首を傾げれば、名字はむっと睨み付けた後、渋々と手を伸ばして体から離していたペットボトルを木更津に突き出した。それにきょとんとしてから、渡すんだ、と木更津がまた笑った。
「俺のあげるから」
吹き出たペットボトルと交換に木更津から渡されたタオルで手を拭いていたら、自身の横にことりと置かれた中身があまり減っていないペットボトルを見つめる。名字が持っていたものは半分は吹き零れてしまったので、これは本当に木更津のものだろう。しかし中身が減っていると言うことは。そこまで考えて、ちらりと木更津を見る。合うと思わなかった視線はしっかりと合ってしまい、驚いて目を見開く名字に木更津は首を傾げて笑う。
「俺、少し飲んじゃったけど」
気にしないでしょ、そう続いた言葉に、再び視線を置かれたペットボトルへと戻す。少し間があってから頬が徐々に熱を帯びる。
「……何を今更照れてるの」
「うっ、うるさいなっ!わざわざ言うから意識しちゃったの!」
「お風呂も入った仲なのに」
「いつの話よそれ!?」
「別にキスするんじゃないんだからさ」
「分かってるよ!むしろ亮が相手ならキスくらい出来るし!」
ばかっ、と木更津からそっぽを向いて、火照る顔を隠すようにタオルを首に掛けて頬を抑える。
「じゃあ、キスしてみる?」
隣から聞こえた声に、時間が止まったような気がした。先程までの火照りがどこかに消えてしまうくらいの驚きに、名字は自分の耳を疑った。ゆっくりと幼なじみの方を見れば、名字と逆側を向いて左手で口元を覆っていた。
「……なんて、言って、み、たり……とか」
段々と尻すぼみになっていく言葉と反して赤くなっていく横顔に、名字の顔も一気に真っ赤になっていく。木更津が帽子を脱いで、暑……、と自身を仰いでいる姿も名字は恥ずかしさで見る事が出来ず、ただ彼との間に置かれたペットボトルを眺めていた。
互いにどうしていいものか分からず、しばらく唸ったり俯いたりとしていたのを、穏やかな海だけが見ていた。
お題「海辺の恋で5題」
(c)確かに恋だった
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