最初は姿勢が悪いんだと思った。姿勢が悪いからスタイルが悪く見えて、雰囲気が暗くなるんだと思った。だから毎日ずっと、起きてる時間ずっと姿勢に気をつけて、背筋を伸ばして過ごした。それが当たり前になるくらいの時間が経って、けれど私は、ブスだった。

 姿勢のせいじゃなくて、純粋にスタイルが悪いんだと思った。体が重くて締まりがないからだと思った。だから毎朝ラジオ体操をして、夜は入浴前に筋トレをして、一時間半身浴をして、お風呂上がりにストレッチをした。欠かさずした。脂肪は減って筋肉は増えて、スタイルは随分良くなった。けれど私は、ブスだった。

 顔のせいだと思った。やっぱり顔の造りが悪いのが原因だと思った。だからお化粧の研究をした。小顔ストレッチに励んで、化粧水や乳液、化粧下地も全部こだわって、できる限り綺麗な顔を作った。けれど私は、まだブスだった。

 内面が悪いのかなと思った。内面の膿が外側に漏れ出てるのかもしれないと思った。だから毎日会う人会う人に笑顔で挨拶をした。困っている人がいたら率先して助けた。誰の悪口も決して言わなかったし、みんなに気を遣って穏やかな人間を努めた。けれど私は、やっぱりブスだった。

 私は絶望的にブスだった。致命的だった。どんなに頑張っても改善されなかった。根腐りしている植物に水をあげてももう駄目なように。燃え盛る炎にコップ一杯の水をかけても意味がないように。
 ブスじゃない人間になれなかった。死ぬまで永遠になれない。
 君が私を、ブスだと言ったから。

 私は一生、ブスだ。



不可逆




>>その他オリジナル
>>トップページ