近所の建物について


今日から私は大学二年になる。
一年の時は何をするにもいっぱいいっぱいだったがやっと余裕が出てきて周りとのコミュニケーションもよく取れるようになった。
だからなのか気づいたことがある。

最近、近所が騒がしい。
もともと私の住んでいる天鵞絨町は多くの劇団があり日中は騒がしい。
けど最近は夜中もそれなりに賑やかになった。
高校までは子どもは早く寝るもんだと10時には寝るように言われていたから
夜中に出歩くことなどなくて分からなかったが
作品の制作のため遅くまで大学にこもっることが多くなり気づいたのだ。
帰り道には大きな建物がある。
豪華な外見でだが以前通った時には人の気配をあまり感じさせない建物だった。
その建物が今では外見に相応しいような暖かな光と楽しそうな声に溢れていた。

「最近さ、うちの近くにあった豪華な廃屋に人が住み始めたっぽいんだよね」
「廃屋で豪華って何よ」

学食で友達の花絵と昼食をとっている時にふと思い出し話題に出してみると彼女はノリよく返してくれた

「本当に廃屋だったのかはよく知らないんだけどさ、前まで人の気配が全然なかったんだよ、豪華なのに」
「ふーん、誰か引っ越してきたんじゃない?」
「そうなのかも。あーあ、引っ越して来る前に建物の写真撮りに行けばよかった!」
「あー‥‥建築美術の課題?」
「そーそれ。気になる建物の写真とか言われてもねー元々建築コースじゃないし浮かばないっていうか。あんな立派な建物なら題材に困らなかったわ‥‥」
「だから建築の座学なんかやめなって言ったのに」
「だってギリギリまで単位取りたかったんだもん‥‥」
「偉いわね〜私はそこまで頑張らないわ」

最後の唐揚げを頬張りながら私を茶化すようにいう花絵
彼女は日本画コースの学生だが私と同じ写真部に所属しており、大学で初めてできた友だちだ。

「花絵さん、お願いがあります」
「却下」
「なんでー!!!」

間髪入れずに断られてしまったことに不満の声がつい大きくなった

「なんでって、今の流れからして一緒にその元廃屋に写真を撮りにいってくれとかでしょ?」
「はい‥‥」
「私建物の写真撮る趣味ないもん」
「私だってないよ〜撮るならポトレがしたい。でも課題だし、」
「ならひとりで頑張ってきなさい。提出日明日でしょ?どっちにしろ今日は私日本画の締切近くてこの後座学全部サボってアトリエに籠るから」
「そんな〜!!!座学1人かよ〜」

お願いを断られてしまった上に座学まで隣にいてくれないなんて、予想してなかった事態に泣きそうだ。
コミュニケーションは周りと卒なくとっているから声をかければ一緒にいてくれる子はいるだろうが
広く浅く付き合っている子が殆どなので間が持たないのだ。

「花絵さんお願いだから座学だけは一緒にいて!」
「断る」
「えー!!!!!!」

カシャ

駄々っ子のように机をたたいているとシャッター音

「レアな桜ちゃんゲット〜♪」
「げ、三好じゃん」
「花絵っちやっほー」
「三好くん?!何撮ったの今!!消して!!」
「駄々っ子な桜ちゃん!激レアだし勘弁してー」

語尾にハートでも付きそうな勢いの彼は花絵と同じコースの三好一成くん
花絵曰くチャラく見えて容量よく課題をこなす鼻に来る系のパリピだそう

「勘弁しては私の台詞だから!せめて撮るならフルメイクのときにして!」
「そういう問題なの?」

そういう問題だよ
朝イチの実技授業でメイクもそこそこしかせずに登校していたわけで
このあと座学の前にちゃちゃっとメイクするつもりだったのだ

「メイク薄くても可愛いよん!この後の座学オレの横でよかったら一緒にいるし許してー、ね?」

三好くんとは花絵と一緒にいる時にしか話したことないし、ぶっちゃけあまり嬉しくはない、が
彼は顔がいいのである。
パリピだろうがなんだろうが顔がいい。
黙ってれば本当に美形。
座学の時間その顔をガン見出来るとなれば多少心が揺らいでしまう。

「三好くん顔はいいけどうるさいしなー」
「ガーン!うるさいとか桜ちゃん辛辣すぎー!」
「そういうとこだぞ三好」

結局花絵は私を置いてアトリエに行ってしまったので三好くんと授業に行くことになってしまった。

「はー顔のいい男の誘いは断れないわ」
「辛辣からの褒め言葉とかうれぴー!」
「あ、三好くん黙ってて教授に怒られる」

そういえば三好くんも建築美術の授業を取っていた
彼はもう題材を決めたのだろうか?

「ねー三好くん」
「んー?」
もうすでに授業に集中し始めたのか生返事の三好くん
「建築美術の課題の写真もう撮った?」
「まだだけど今日帰ったら撮るつもりだよー」
「え、自宅?自宅で課題やる気?」
「いやいや!題材に出来るほど立派な家じゃないから!俺が今入ってる劇団の劇場がいい感じなんだよね〜寮でもいいんだけどね」
「え、候補がふたつあるなら一個紹介してくれない?気になるところはあるんだけど声掛けにくくて」
「もちOKだよ!監督ちゃんにはオレからLIMEしとくから授業終わったら向かっちゃお!」
「うわーマジありがたい!パリピうるさいとか思っててごめん、今日からお友達で宜しくお願いします。」
「花絵っち譲りの辛辣ウケるー」

三好くんただの良い奴じゃん!パリピだけど!!
これで課題は何とかなりそう!
捨てる花絵さんあれば拾う三好くんありだったわ、ありがとう!

私は四限もあった為、その間三好くんにはアトリエで待っていて貰うことになった。
その間にメイクも直しておこう。
三好くんだけならまだしもさや監督さん?にもご挨拶することになりそうだし、ちゃんとしないとね。

「失礼しまーす」
そっと日本画コースのアトリエを訪れると真剣に課題をこなしている花絵と三好くんがいた
デザインコースとは違う雰囲気に私の場違い感が半端ない

「あ?桜、何の用よ」
「花絵辛辣かよ、八つ当たりやめて」
「こっちは締切前で煮詰まってんのよ」
「はいはい、私は花絵さんじゃなくて三好くんをお迎えに来たんですー!」
「は?なんで三好?」
「花絵に断られた課題三好くんに協力してもらうことになったの!」
「あのコミュ力高男よくやるわ‥‥三好ー!!!」

呆れ顔をしながらも大きな声を出して奥にいる三好くんに声をかけてくれる花絵はやっぱり優しい
流石に違うコースの私はアトリエで大声だしたり、奥の方まで入っていく勇気はない。

「桜ちゃんいらっしゃーい!」
「三好くんごめんお待たせ!」
「大丈夫だよ、オレも課題進めてたし」
「三好、桜の面倒見てくれるのはいいけど手は出すなよ」
「花絵!!」
「オレ信用なさすぎない?」

冗談半分の会話に私はテンションが合わせづらくてもだもだしていると話題を振ったのは花絵なのにうるさいからさっさと出てけど2人してアトリエから蹴り出された。


「ねえ、三好くんの劇団ってなんて名前なの?」
「あれ?!オレ桜ちゃんにも前チラシ渡したじゃん!」
「締切前だったから覚えてないわ」
「ひでー、まーいーや!MANKAIカンパニーっていう劇団だよん」
「また面白い名前で」
「でしょでしょ?寮もちゃんとあるからめっちゃ助かってるんだよねー!」
「あーその分画材に回せるもんね、日本画の画材高いよねーよくわかんないけど」
「デジタルだって初期投資かかるじゃん?」
「最初だけだよまじで後はそれをどう活用するかだから」



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