序章
「一大事でござりまする、審神者様!」
ドタドタと体の大きさに比例することのない足音が響き渡ったと思えば、部屋の目の前にいる一匹の管狐。名はこんのすけと、その見た目とは似ても似つかない可愛らしい名前であると思うのだが、存外可愛らしい表情や反応を返すものだから見た目で判断はできぬなとしみじみ思い知らされる。
「どうした、その様にして走るとはお前らしくもない。一体何があった」
余程急いで走ってきたらしく、ぜいぜいと呼吸を乱している。茶でも飲めば落ち着くかと思いおもむろに立ち上がるとこんのすけが、一つ深い深呼吸をし落ち着いた様子で話し始めた。
「審神者様、政府からの緊急命令でございます。【時間遡行軍が別の次元に入り込み歴史を変えようと企てている。直ちに出陣し歴史遡行軍の目論見を阻止しろ】以上になります」
ひたりと、思考が止まった。緊急命令とは今まで聞いたこともない、政府が余程切羽詰まっているのだろうということは話からして理解できるが何故時間遡行軍は別の次元へ入り込むのだろうか。そこで歴史を変えたところで我々のいる歴史が変わることはないだろうに。
「命令を承った。だが少しばかり質問をさせてもらおうか。」
「はい。私めになんなりとお聞きください」
茶を用意しようと立ち上がったのに何もせず座り込むというのは失礼なので、二人分の茶と菓子を用意しながらこんのすけに質問を問いかける。
「質問は二つある。まず一つ目、別の次元とはどういうことか。」
「はい。審神者様は漫画というものをご覧になったことがありますでしょうか。今回、時間遡行軍が入り込んだのは漫画の中なのです。」
「二つ目、何故そのような事をするのか。マンガの中の歴史を変えたところで我々の歴史に影響を及ぼすとは到底考えられないのだが」
用意できた茶とカステラをこんのすけと自分の目の前に置く。カステラが好きだと言っていたから買っておいたのが正解だったらしい、一段と目を輝かせた。
「あっありがとうございます。そのことには我々も頭を悩ませました。なぜ時間遡行軍はこのようなことを企てたのか。到底見当もつかないのです」
「ほう、政府も分からずじまいなのか。」
「はい。なので審神者様に時間遡行軍の目論見を阻止するとともに情報を探ってもらいたいのです」
「成程、大体理解出来た。それでどこへ出陣すれば良いのか?」
「はい。いつもの様に開門して出陣していただければ大丈夫です。但し門にこの札を貼って頂きます」
ごそごそと自分の風呂敷から4枚の札を引っ張り出し床に並べた。それぞれ描かれている紋が違うようだが、これが別次元への鍵のようなものか。
「それぞれ別の次元へ繋がっているのだな?」
「はい。審神者様のおっしゃる通りでございます。それでは早急に出陣の準備をお願い致します。私はこれで失礼致します」
綺麗にカステラと茶を完食し、こんのすけは帰っていった。湯のみと小皿を片付けながら考える。
さて、各部隊はどう編成しようか。
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