「いやぁー、想像よりずっとかわい子ちゃんだねえ!」
「そう、ありがとう」
「神様って言うくらいだからもっと人形みたいなさ?この世の物とは思えぬ見目の女子かと」
逆さまの笑顔が左右に揺れ動くのを見つめながら、掛けられる明るい言葉に短く返す。
わたしの後ろに控えている藤が低い声で唸った。
「あっははぁ〜……隣の月色の旦那落ち着かせてくれない?俺様、今にも斬られそうなんだけど」
「藤」
「これしかいなかった」
「他には逃げられたのね」
「アレ?聞いてないね?」
天井から宙ぶらりんと吊るされた派手な髪色の忍は器用に身を捩りながら、突き出される藤の刀の鞘を避けていた。
部屋に戻ると、すでにそこには藤がいた。
−−−−部屋の真ん中に見慣れぬ人影を吊るしたまま、何食わぬ顔でお茶をすすりながら、だが。
わたしを視界におさめると、藤はフードを被っていても見える口角をぐ、と上げて笑い。
「綾瀬、鼠を捕まえた」
なにやら喚くそれに、もう一度目を向けた。
そして首をかしげる。
「だーもう!こんな雑な捕まえ方ある!?いい加減に下ろ……ちょ、やめっ、鞘押し付けんなっての!」
「許しがあれば、即、首を落とす」
「 こ っ わ ! ! 」
元就も気付いていながら放置なのだろう。
よくもまあ、この煩いものを放って政に手を着けられるものだ。
「もう少し大人しく出来ぬの?」
「アンタの部下の所為なんだけどっ!?」
「綾瀬に気安く話しかけるな、百叩きだ」
「なんで!!?」
実にくだらない。
元就がこれらを追い払わぬ理由がほんの少し分かったかもしれない。
「藤、それを降ろしてやろう」
「しかし」
「お前が居るのだもの、如何様にでも出来るでしょう?」
「……ああ」
「えっ怖、明らかに俺様の事だよな!?物騒……、いってぇ!!」
「座せ、妙な動きは許さない」
「へいへい……」
ぶつんと唐突に斬られた縄から逃れられずに畳の上へと落ちた忍をよそに、藤はわたしの隣へと腰を下ろした。
髪を撫で付けるそれに微笑んで、わたしは藤の髪に、同じように指を通す。
言い付けを守る、可愛い良い子なのだから。
褒美の一つも与えなければ。
「よしよし、藤は良い子ね」
「私を稚児の様に扱うな!……まあ、悪くはない」