「急患!」「ハ、ハイ!」
「うええ、さっきのか……?」

慌てた声にルチルがびくりと身体を震わせ飛び起きる。「ハイハイハイ……」出来上がった白粉を棚に戻していたクンツは梯子を降りながら、医務室に駆け込んできた虹色の人影に声をかけた。

「ダイヤ」「クンツ!」
「おい、なんでココにいる!」
「げえっ、いやー違うんだって、俺はルチル大先生のお手伝いを」
「言い訳は後で聞く」

なぜか全身ずぶ濡れで何かの入った器を抱えたダイヤと同じくずぶ濡れのボルツとジェードが慌ただしく飛び込んできた。この際、「覚えてろよ」「ハイ……」じっとしていられなくて部屋を抜け出して医務室に来ていたのは後できっちり怒られよう。そりゃあバレるか、だって俺はパジャマのままだ。……ダイヤの持つ器の中で何かがもぞっと動いた気がするが、ルチルも気にしていないようなのでここでは口を噤んでおく。

「全く、はしゃぎ過ぎて池に落ちたおバカさんが開きでもしましたか」
「そう!そうなのよ!フォスが」
「やっぱりフォスが落ちたんだな……んで?肝心のフォスは?」

辺りを見回しても濡れねずみの3人とルチルとクンツだけ、あの目立つ薄荷色は影も形もない。池に落ちた程度でそこまで粉々になる筈もないし……ルチルと顔を見合わせていると、ダイヤが手にした器の中身を見せた。

「フォス!しっかり!」
「……」「……」

ボルツが無言で首をふった。嘘だろ。もう一度テーブルの上に降ろされたその物体を見る。クンツとルチルは今、削げ落ちたようとしか表現しようのない表情で冷めた目をテーブルの上のそれに向けていた。

「さすがダイヤ属、冗談も尖ってますね」
「いくらダイヤでもやばい」
「もう大丈夫よ、ルチルがすぐ元に戻してくれるから!」
「だって、ちょっと……なによコレ」

クンツの震えた声が状況をよく物語っていた。その、モルガのような色をしたクラゲよりも弾力のありそうなもの。あろうことかソイツを、ダイヤはフォスと呼んだのだ。ぷるりぷるりと動くたびに体を震わせるフォス(仮)はきいきいぴいぴいと得体の知れない声を上げて辺りを見回している。ダイヤを見ると……心配そうにフォス(仮)を見ている。それから、名医のルチル大先生を見る。

「どちらかと言えば手遅れですね」
「手遅れか……」

断言した。これはどうしようもない。

花骸