00_むかしの話

「葵個性まだ出ねぇのかよ!」

4歳の誕生日を迎える少し前。
幼馴染の爆豪勝己は小さく手の平に爆発を起こさせながら話しかけてきた。
言葉づかいや態度は悪いけれど、根はすごく優しくて彼はヒーローに向いていると思っていた。

『こ、これから出るもん!…たぶん』

同じ園のみんなは次々に個性が発現している中、私は未だに個性が発現していない。
どんな個性なのかわくわくしている反面、もしかしたら個性が出ないかもしれないという不安もあった。

「ま、俺の個性には敵わねぇだろうけどな!」
『・・・・・・』

彼の自信満々の発言に私は思わず黙ってしまった。
私もヒーローに憧れているうちの1人。だけれど性格はヒーローには向いていない内気でひ弱で、泣き虫だった。
今にも泣きそうな私をみて、彼は私の頬を両手で挟むとうつむいていた顔を上にあげさせた。

「泣くなよ・・・葵にもしなんかあったら俺が絶対守ってやるし、隣にいてやるよ」
『泣いてないもん。私だってかっちゃんに何かあったら守ってあげるし、隣で慰めてあげる』
「はぁ!?別に泣かねぇし!男が女守るもんだろ!」
『わからないよ!私のほうが個性強いかもしれないもん』
「は。どうだかな」

私と彼はお互いの小指を絡め約束した。
大きくなってもずっと隣にいよう―と…。




だけど翌日から私と彼は隣にいることはなかった。