01

 カードファイト部を作ろうと決めた僕は、その日のうちにチラシを描いて、翌朝から校門の前で配り始めた。
 でも、はっきり言って状況は芳しくなかった。
 クラスメイトの反応からもわかっていたことだけど、やっぱりこの学校には、ヴァンガードに興味を持ってくれる人なんていないみたいで。
 チラシを渡す直前に手を引っ込められて地面に落ちたり、踏みつけられたり、受け取ってもらえたチラシもすぐ丸めてゴミ箱に投げ捨てられたりと、酷い有様だった。
「カードファイト部、部員募集してます! お願いしまーす!」
「……ヴァンガード?」
 それでも必死で声を張り上げている時だった。
 僕の耳が、そんな声を拾ったのは。
 顔を上げると、制服を校則通りに着込み、首元のリボンまできっちり結わえた人が僕を──たぶん正確には僕の手にあるチラシを、じっと見つめていた。
(もしかして、興味を持ってもらえてる?)
 期待を込めてチラシをそっと差し出すと、彼女はそれを受け取ってくれた。
 白くて細い指先に、少しドキリとする。
「あ、あの、興味ありますか……? 初心者でも、教えるので……」
「……私、」
 彼女が何か言いかけた時、横から伸びて来た腕がチラシを一枚スッと持って行った。
 思わずそちらに顔を向けると、コーリンさんがチラシをしげしげと眺めていた。
「コーリンさん⁉」
「カードファイト部=c…。自分で作るつもりなの?」
「はい、やってみようと思って」
「部を作るのって、大変なんじゃないの」
 そう尋ねられたけれど、大変なのは元より覚悟の上だ。
 仮に部員が集まったとしても、生徒会や先生の承認が得られるかわからない。
 それでも頑張るつもりだった。
 何人集まったの、という質問には、まだ僕一人だけです、としか答えられなくて少し恥ずかしかったけれど。
「私、入部する」
「えっ、……え?」
「カードファイト部に私も入部するって言ってるの」
 耳を疑って思わず聞き返したけど、聞き間違いじゃなかった。
 するとその言葉が呼び水となったのか、僕の周りにはあっという間に入部希望者の人だかりが出来上がって。
 けれどコーリンさんは、自分目当てのミーハーな人間なら認めない、本気でヴァンガードがしたい人以外はいらないときっぱり宣言した。
 そこで彼らが本気かどうか見極めるために、コーリンさんと僕で入部を希望する人たちとファイトすることになった。
(……そういえば、さっきの人は)
 ファイトをするために移動する直前、はっと思い出して辺りを見回したけれど、あの人の姿はもうどこにもなかった。

 *  *  *

 最後の挑戦者は、僕がこの間ヴァンガードを教えた石田くんだった。
 彼は最後まで諦めず、コーリンさんから勝利を掴み取って、カードファイト部への入部を認められた。
 これで三人。あと二人部員を見つけられれば、ひとまず設立の申請まで漕ぎ着ける。
 それは本当に嬉しかったけど、僕の心にはどうしても引っ掛かりが残っていた。
「……せっかく、興味を持ってもらえたと思ったのにな」
 ぽつりと呟いた僕の声をかき消すように、朝のホームルームの5分前を知らせる予鈴が鳴った。