レアロキくん爆誕


拝啓、お父さん、お母さん、陽。
お返事ありがとうございます。手紙の間があいてしまい、すみません。
良いリラックス方法教えてくださりありがとうございます。おかげでよく眠れました。
実は、よく眠れるようになったのは他にも理由があります。
それが、今回手紙が遅れてしまう原因になったことです。

お母さんにはその原因は言っていましたが、お父さんと陽には言わないでほしいと言っていたので、今回の手紙で二人にも伝えようと思います。


単刀直入に言いますと、私はストーカー被害というものに遭っていました。
上記の通り、もう解決はしたので大丈夫です。私自身にも怪我はありません。
4月の中頃あたりから、何となく誰かに見られている感じはしていました。
しかし、それは電車の中や普通に道を歩いているときでも、雄英の制服を着ている点で人からの視線をバッシバシに受けていたので、そういう類だろうと思っていました。


A組の方達もよく見られると言われていたのでおかしな事ではないと放っておきました。
その後にすぐ雄英体育祭があって、こんなトーナメントにも出場していない私でも声をかけられたりしたのですから、またそういう類だと。

しかし、流石の私も何となく違うと思い始めました。
こんな私がストーカーなどされるわけが無いという慢心が、ストーカーされているという自覚するまで時間をかけていました。


いつもより遅い時間帯で帰るときは確実と言っていいほど、視線を感じます。雄英を出た頃は視線は感じません。ですが最寄りの駅についたくらいから視線を感じ始めます。
その時間はちょうど会社員の方や他の学校の部活生とかぶる時間帯なので、帰宅ラッシュというものに巻き込まれます。
電車の中でも視線を感じますし、降りたあとも改札を出たあともです。
ガラスなどの反射で後ろ伺ったりするのですが、そのような人影は見えません。

暫く歩いて、マンションに着く直前あたりでいつも視線は無くなるのです。
一応巻いてみるため、別の道で曲がって走って駅の方に戻ったり、別ルートで帰ってみたりするのですが、いつも視線は纏わりついてきます。
けれど、いつもマンションあたりで視線はなくなります。

流石に怖くなったので、できるだけ早く帰るようにするのですが、それは朝の登校のときも感じます。
同じようにマンションを出て、丁度見えなくなったくらいから、雄英の最寄りの駅まで。


それから、学校で職場体験がありました。
雄英体育祭はプロヒーローも多く観戦しに来ます。ヒーロー事務所は今年気になった生徒の二名に指名を送れるようです。
トーナメントにも参加できなかった私ですが、なんと一件の指名が来ました。
プロヒーロー、ガンヘッドさんの事務所です。

職場体験中は家には帰らないので、その視線を感じることはありませんでした。
ちなみに、ガンヘッドさんですが、見た目とは裏腹にとてもチャーミングで愛らしいお方でした。体術も鍛えられ、一緒に職場体験に行った麗日さんという強くて素敵で麗らかな美少女とも親陸を深められたので、幸せでした。


ですが職場体験を終え、久々にマンションに帰ったところ、溜まっていた手紙をポストから取り出したとき、一枚だけ匿名の手紙がありました。
嫌な予感はしたのですが、とりあえずそれを持って帰ってみようという事で部屋に持ち帰り、そっと中身を見ました。


「う、わ…」


そこには本当にストーカーなのだと言う感じの内容が書いてありました。
僕、という時点できっと男性でしょう。
私が雄英でどんな個性かも知っていて、住んでいるマンションまで、部屋番号まで知っていて。思わず寒気が走りました。

監視カメラなど仕掛けられていないか、くまなく部屋は探し回ってみましたがそれらしきものは見つかりませんでした。

とりあえず学校は休日を挟むので、その後にA組の皆さんに相談しようと決めました。

ですがその休日中に二通の手紙が届きました。
また似たような内容です。その中の一つには私を完璧に盗撮した写真があり、びっくりしました。こんな写真いつ撮ったのやら。

休日明けはいつもより早く家を出て、走って駅まで向かい、電車に乗り込みました。
その日は視線を感じることなく登校することができました。


「お」
「お…?あ、轟さん。おはようございます……」
「おう。…職場体験で疲れたのか?」
「はい、まぁ…。でも、轟さんも大変だと聞きました。大丈夫でしたか?」
「…ああ」


良かった。気付かれてない。

そう思いながら一日を過ごし、お昼の時間になりました。


「絢ちゃん、どうしたのかしら」
「な、なんでしょう」
「いつもより顔色が悪いように見えるわ。何かあったの?」
「ホントだ。黒井なんかゲッソリしてるよ」
「職場体験中はそんな顔色悪なかったのに」
「絢ちゃん体調悪いー?」
「#name3#大丈夫?」
「私達で良ければお話、お聞きしますわ」

「み、皆さん…!」


あまりの優しさに、私は感極まって泣いてしまいました。
キリキリに張り詰めていた緊張の糸が緩んでしまったのかもしれません。
いきなり泣き出したのにも関わらず、一生懸命慰めてもくださり、嬉しかったです。
途中からは緑谷さんと飯田さん、轟さんまで心配してくださいました。


「黒井さん、だ、大丈夫?」
「ご、ごめんなさい。もう大丈夫です」
「それなら良かった。俺は学級委員長だ、何か悩みがあるなら話してほしい」
「……実は…」
「ゆっくりでいいのよ、絢ちゃん」
「はい、ありがとうございます……実は、ストーカー被害、に…あってると思われまして…」


私がそう言うと皆さん驚いたように声を上げました。
そりゃそうですよね。こんな目立たないやつがなんで、ストーカー被害になんて遭うんでしょうね。届いた三通の手紙を机の上に出して、内容を読んでもらうと、段々と表情が険しくなって行きました。


「これって盗撮じゃん…」
「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ!黒井くん!」
「ご、ごめんなさい…確証がなくて……」


その後どこまでつけられているかなど、詳しいことを話しました。
相澤先生にも伝えると、送ってやりたいが、今日は外せない用事があるとの事でした。
大丈夫です、と遠慮すると、一緒に付いてきてくださった轟さんが俺が送ると申し出てくださいました。
断ったのですが、轟さんも譲ってはくれず、送っていただく流れとなったのです。


「あの、本当に大丈夫ですよ…?」
「…言い方悪ィけど、大人の男に小柄な黒井が敵うと思えねぇ」
「うっ」
「気にしなくていい。今はどうだ」
「多分、いると…思います」


気付かれない程度に轟さんが目であたりを見渡した後、ぐいっと手を引かれました。


「何かあった時に対応しづれぇから、もっと近寄ってほしい」
「わ、かりました」
「助かる」


先程から女性の視線が痛いので、条件反射で少し距離をとってしまうと、轟さんは私を自分の近くに寄せます。
それを何度か繰り返した後、犬のリードの様に手を繋がれてしまいました。その状態で電車に乗り、私の家の最寄りで降りると、段々人が少なくなり、歩いているのは私達二人だけになりました。


「こんな人通りすくねぇのか」
「は、ぅわ!」
「危ねぇ…黒井、注意力散漫過ぎる気がするぞ…」
「おっしゃるとおりでございます…」


車が来たのに気づかず、轟さんに手を引っ張っていただかないと轢かれそうになり、彼にも呆れられてしまいました。
その時、轟さんがもう一度私を引っ張り、私に背を向けるように立ちました。


「お前か。黒井のストーカーは」
「絢ちゃんを離せ!!」
「!この声…」
「知り合いか?」


轟さんの背中で見えませんでしたが、その声の持ち主は私が思うところでは一人しかいません。
隣人の高田さん、と小さくつぶやくとその声が聞こえていたようで彼は、私が聞いたこともないようなべっとりとした声で轟くんを捲し立てました。


「絢ちゃん……その子は、俺守ってあげないといけないんだよ…だから変な虫が寄り付かないように、見ていたのに…!!」
「変な虫はテメェだろ。黒井に怖い思いさせてんじゃねぇ」
「はぁ?怖い思い?そんなわけ無いだろ、ねぇ、絢ちゃん?」
「大丈夫だ、答えなくていい」


高田さんはそう言って私に呼びかけました。優しかった彼に裏切られた気分になり、それと同時に狂った様に笑顔を作る高田さんが怖く、轟さんの服をぎゅっと掴みました。
ちょっと目を瞑ってろ、と轟さんに言われ、急いで目を瞑りました。
聞こえてくるピキピキという音と冷気、そして高田さんの声。
ゆっくり目を開けると轟さんの氷結で高田さんの足元が凍っていました。

その後にすぐに警察の方が来てくださいました。近くの住民の方が何かと思って、通報してくださったようでした。
近くの警察署まで出向き、高田さんに貰った手紙を差し出し、いつ頃からかという聴取のあとやっと開放されました。轟さんも個性使用に関してのお咎めは無かったそうです。


「ストーカー捕まって良かったな」
「轟さんがいなかったら、多分…」
「今回お前は無事に済んだんだし、親が暫くいてくれるんだろ?」
「はい…」
「そろそろ帰る。遅くなっちまったからな」
「ご、ごめんなさい…迷惑かけて」
「別に迷惑じゃねぇ。…友達助けんのは当たり前だろ」
「本当にありがとうございましたっ…、絶対にお礼します」
「……じゃあ、明日、そば奢ってくれ」
「必ず!」
「…ふ、じゃあな」
「ま、また明日!」


非常にレア過ぎる轟さんの微笑みで胃が痛くなりました。
思い出して今も痛いです。
いつ見ても慣れません。できる事ならばイケメンに耐えられるメンタルがほしいです。
そしてそんな笑顔を見せてくれるレアな轟さんを、私はレアロキさんと呼ぶことに決めました。


後に聞いた話ですが、高田さんはとりあえず釈放されたようです。
ですが、今後私に近づいた場合は即逮捕ということになったと警察の方から連絡がありました。
もう眠れない事もなく、安心して毎日を過ごせています。


そろそろ期末試験のシーズンだそうで、頑張って復習をして、赤点を取らないようにがんばります。
帰省する日ですが、林間合宿の前に数日オフの日があるそうです。
その日を使って、一度帰省しようと思います。
それを楽しみに、期末試験をがんばります。


追記 芦戸さんにもっと軽くでいいよ、と言われました。
   軽く、というのはどうやればいいでしょうか。


黒井 絢


ーー


「やめろ母さん止めないでくれ!!」
「姉ちゃんとこ行くぅ!!」
「私が目を光らせてきたから大丈夫だって言ってるじゃないの。ほら、晩御飯食べるわよ」

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