純粋なあの子は


拝啓、お父さん、お母さん、陽。
前回の手紙ではお父さんと陽に沢山心配をかけてしまったようですね。
ごめんなさい。

けれど、こうでもしないと二人は私に所に来てしまうとお母さんからのアドバイスで、言っていませんでした。
私のせいで要らぬ心配をかけ、仕事や勉学に支障をきたしてしまうといけないと思ったからです。全て事が収束してからの報告に方が良いと感じました。

一日おきに二人から電話が掛かってきますが、掛けて頂かなくても大丈夫です。
もう変な視線も感じませんし、お隣は高田さんが出ていってからは、女子大学生のお二人がシェアハウスをしていらっしゃいます。
挨拶に来ていただいた時、親陸を深められました。
今では週一回ほど晩御飯を一緒の食卓で食べる仲です。


同封している写真は、たこ焼きパーティーをしたときの写真です。
右側の茶髪の女性は関西出身の方だそうで、実家から持ってきたたこ焼き器を使って振る舞ってくれました。お名前はミサキさんです。
関西出身のヒーロー、ファットガムがマスコットとして出演している、「たこ野郎」というたこ焼き専門店のたこ焼きが一番美味しいそうです。

ミサキさんのご親類に「たこ野郎」の開発部の方がいるらしく、この秋に直径15センチのたこ焼きが発売されるそうです。
もし関西に行く機会があれば是非とのことでした。

その隣の黒髪の女性はリコさんです。ご出身は新潟で、特産品のお米をいつも頂いています。
お料理がとても上手で私もたまに教えて貰っています。
そのおかげで今は、作れる品のレパートリーが増えました。
ミサキさんはユーモアのある明るい方で、リコさんはおしとやかな方です。
全く性格は違いますがお二人の会話はとても面白く聞いていてあきません。

なので、今は本当に大丈夫です。安心してください。
帰省したときは私の料理を振る舞いたいと思います。


さて、前回話していた期末試験でのお話です。
結果は筆記の方でも実技の方でも赤点はなく、ほっとしました。
色々あって、あまり勉強していなかったのですが、クラス一の成績の八百万さんのおかげ勉強会での成果が出ました。

八百万さんは見た目も麗しく、普段の態度やお話の仕方などから予想していましたが、相当のお嬢様でした。
お家、いえ、お屋敷がとても広く、場違いな気がして仕方ありませんでした。勿論お友達の家にお邪魔するのでそれなりに落ち着いた失礼のない服装で行きましたがそれでも…というほどの仕切りの高さです。
そんな緊張も八百万さんのワクワクとした愛らしい態度とお顔でどうでも良くなってしまいました。美少女恐るべしと言ったところでしょうか。

勉強会に行った上鳴さんや耳郎さんの言葉を借りるとすれば、「カァイイから、いいや…」です。


そしてもう一人、主に数学を教えてくださったのが、轟さんです。
八百万さんは大人数相手に一人で教えてくださっていたので、あれも、これも、と聞くのは流石に迷惑だと思ったので、あまり苦手ではない教科を選びました。
つまり、数学が残ってしまったということ。

学校でも数学担当のエクトプラズム先生に質問に行っています。
その時、丁度轟さんが日直で日誌を相澤先生に出しに来ていたようで、私の姿を見かけたそうです。
私は全く気づいていなくて、ありがとうございましたと言って職員室を出ると、ドアのすぐそばに轟さんが佇んでいらっしゃり、驚きのあまり奇声を上げてしまいました。
そはもう、何語?と聞くくらいに。


「とっととtttとど、ととど轟さっ」
「大丈夫か?」
「だっ、だだ大丈夫デス…ちょっと驚いただけナノデ…」
「…数学わかんねぇのか」
「エッ、アッ、ハイ!正直、幾ら説明していただいてもわかる気がしない教科でして…」
「これから残って勉強するけど、黒井もか」
「そうです。家には誘惑が…ゑっ」
「え?」


成り行きから轟さんと一緒に勉強する事になったのですが、あまりにも私の出来が悪すぎて、轟さんが教えてくださいました。


「え、なんでこれが…」
「この公式だからな」
「?なるほ、ど…?」
「なるほどって顔してねぇけど」


轟さんの根気よいご指導のおかげで一番躓いていたところは回避できたのですが、クエスチョンマークを浮かべると同時に、よく合格できたな…という視線が刺さって心が痛かったです。
私でもわかっています。なんで受かったんだろう…。


「ああっ、なるほど!!」
「分かったか」
「はい、ありがとうござっっ!」
「ござ…?」


問題が理解できた嬉しさで前を向くと、そこには轟さんの顔がお近くに。
同じ机の上で勉強してるから、顔が近い。気をつけよう。ファンに殺されかねないと、極力前を向かないようにしていたのですが、すっかり頭から抜け落ちてしまっていました。
ファンの皆様にも悪いし、私の心臓にも悪いです。


「そろそろ帰るか」
「あっ、私は、もう少し勉強して帰ります」
「…もう暗ぇぞ」
「大丈夫です。後10分くらいなので」
「……じゃあ、10分経ったら帰るぞ」
「はい!……エッ」
「お?」


その後轟さんが送ると申し出てくださったのですが、流石に悪いと断ると威圧の攻防の末、私が轟さんの威圧に耐えられなくなってしまい、結局送っていただくことになりました。本当に、何から何まですみませんという気持ちでいっぱいです。
その日はミサキさんとリコさんに彼氏!?と聞かれてしまいました。むしろ文面に書くのも手が震えます。しっかりと誤解を解くまで結構時間がかかってしまいました。女性って怖い。


結果、期末試験では、八百万さんに教えていただいた教科も最高得点を記録しましたし、数学も目を背けたくなくなるような点数ではなくなっていて、一安心しました。

実技の方では、プロの先生方にハンドカフスをかけるか、逃げ切るかの試験で、私は飯田さんと尾白さんと一緒になり、パワーローダー先生が相手でした。
私も付加でサポートをして、お二人の活躍のおかげでなんとか合格しました。

バスに乗ってまた戻ってくると、怪我の箇所がないかの確認がされました。
私はそんなに動いていないのにも関わらず、怪我をするという鈍くささを発揮。飯田さんになんで言ってくれなかったんだ!!と怒られてしまいました。すみません。

リカバリーガールに治して貰い、カーテンの裏で身なりを整えてカーテンを開けると、モニターの近くに轟さんがおり、数学ができた事を報告しました。


「とど、」

「あの作戦、結構先生も騙されてくれたな」
「ですが、一度レバーを押しそこねてしまって。先生はああ言ってくださっていましたが、私の落ち度です」
「結果、合格したんだ。自信持てばいいだろ」
「…はいっ!あ、黒井さん!」

「お、お疲れ様です!」


一緒にいた八百万さんにも報告しました。お二人は推薦で合格していらっしゃり、担任の相澤先生をクラスで一番早く倒し、合格なさいました。
流石、と言ったところでしょう。


「どうしたんですの?」
「ちょっと怪我をしてしまって…あ、もう治ったので大丈夫です!後、聞きました、お二人がいち早くクリアした事」
「はい、轟さんのおかげです」
「いや、八百万の作戦は俺よりも良かった」
「そんなことないですわ」

「じゃ、じゃあ私、先に戻ってますね!」


期末試験も終わりやっと一息つけました。
帰省も変更なく帰れそうです。
お土産楽しみにしておいてくださいね。


追記 軽くの意味がやっとわかりました。
   下の名前今は呼ばせて頂いています。
   まだ少し照れますが、しっかり呼べるにように頑張ります。


黒井 絢


ーー


「…母さん」
「なに?」
「絢、なんか元気ないね」
「うふふ、恋の病かしらね」
「コッッ」

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