コンサートを観に行った。兄たちが出ていたから。
大きな音がお腹にずんずん響いて、心臓がどくどくなる。苛烈な演出と客席の熱狂、もう何回目か分からないのにどうしても慣れなくて、気付いたらぐるぐるする意識の中で床にうずくまる。
あ〜あ、ちゃんと最後まで見れたことってないな。

目を覚ますと私は建物内の通路そばにある長椅子に寝かされていた。

「xxちゃん大丈夫?カルピスと水、どっちがいい?」
「......水」
「はい」
「ありがとうございます」

冷たいカルピスのペットボトルは首の下に置かれた。
大音量の音楽が壁を通り抜けて、どくどく鳴っているのが聞こえる。

「もう見れないのかな」
「気持ち悪くなくなったら席戻ろうか」
「ちゃんと全部見たかった」
「また見れるよ」
「そうかな」
「お兄ちゃんたち......」
「うん?」
「......なんでもない」

xxちゃんが望んだら、いつでも向こうに戻れるし、お兄さん達とだって暮らせるよ。

と、優しい叔父は言うけれど。
今さら叔母が私を手放すはずがなかったし、母があの家に私を置きたがらないのも理解していた。
もし私が心から望むと言えば叔父は賢いから本当に周囲を説き伏せてそれを叶えてくれるのかもしれないけど、2人の女を裏切るような気力もない。抗って得る何かも見当たらない。

漠然と、離れたいと思うことはある。
ただそれは自発的な意志ではなく、一過性の反抗期のようなもののように思えた。

「xxちゃんが望むのなら、xxちゃんはあのお家でxxくんともxxくんも、樹くんとも一緒に暮らせるんだよ」

叔父の言葉は、窮屈な思いの心に優しく沁みた。
麻薬のような一瞬の安らぎ。
同じような感覚を味わったことがある。ひとつ上の兄。
あの人の優しさもまた、怠惰な心に染み込む