逆転ヒロイン


「ありがとうございました」

会計済みの商品を入れた袋を手渡すと、それを受け取ったサラリーマンは、軽くぺこりと頭を下げた。一度も話をしたことはないが、毎日立ち寄ってくれるこの人は、普段どんな日常を過ごしているのだろう。
スーツ姿の背中を見送った後、ちらりと店内の時計に目をくばせると、時刻は21時20分。ちょうどあと10分で、今日のバイトが終わる時間だ。

そろそろ、来るかな。

期待に胸を膨らませながら、そんなことを思う。特に約束はしていないのだが、ある日突然ふらりと私の日常に現れたその人物は、バイトの終わり際になると、決まってここにやって来るのだ。

「そわそわしてるねぇ。なまえちゃん」

くすくすと笑いながら、品出しをしていた店の主が、そんなことを口にした。

「べ、別にそんなことは…」
「そう?21時を過ぎた辺りから、やけに時計を気にしてるのは、僕の思い過ごしかな?」
「…叔父さん、面白がってるでしょ」
「そんなことないよ?僕はただ、可愛い姪っ子の恋の行く末が気になるだけ」
「それを面白がってるって言うの!悪趣味よ!」

少し強めに声を荒らげると、この店の主であり、私の叔父でもあるその人は、両手を軽く上げながら、肩を竦めてわざとらしいポーズを取った。

「怒らない怒らない。ほら、彼がびっくりしてるよ」
「え…?」

にっこり笑ってそう言うと、叔父は店の自動ドアの方に向かって、スっと指を差してみせた。恐る恐るそちらに顔を向けると、少し切れ長の目を軽く見開いた男の子が、こちらの様子を伺うように、静かにそこに立っていた。

「い、いつからいたの!?」
「今さっき」
「は、話聞いてた…?」
「いや。俺が聞いたのは、お前が『悪趣味』だって言ったとこだけ」
「そ、そう…」

私がそう返事をすると、彼は店の奥へと足を踏み入れ、叔父に小さく頭を下げた。

「こんばんは。轟君」
「ども」
「こないだテレビ観たよ。また大活躍だったね」
「ありがとうございます」
「もうエンデヴァーの事務所継げるんじゃない?」
「いえ…親父と比べれば、俺はまだまだなんで」
「はは、かっこいいねぇ、君は」

彼の肩を軽く叩きながら、叔父が笑ってそう口にすると、轟くんはきょとんとした顔を浮かべて、はぁ、と小さく返事をした。そんな彼らのやり取りをぼんやり見ていると、叔父は自身の腕時計を見てから、私と彼を交互に見て、にやりと口角を上げてみせる。

あ、なんか余計なこと考えてるな。今。

「ちょっと早いけど、見ての通りお客さんもいないし、なまえちゃんはもう上がっていいよ」
「いや、あと5分もないし、いいよ別に…」
「いいからいいから。じゃあそういうわけだから、毎回申し訳ないけど、うちの姪をよろしくね。轟君」
「はい」

躊躇う私にお構い無しに、彼らは二人で話を終わらせた。どことなく軽快な足取りで、叔父は品出しに戻って行き、その場に残された轟くんは、こちらにじっと視線を向けた。

「だそうだが、どうする?俺は別にどっちでもいいが」
「じゃあ、支度してくる…」
「ん。分かった。いつもの場所にいるな」
「う、うん」

いつもの場所。そう言われて胸が高鳴るのは、これで一体何度目だろう。一度店を出ていく彼を見送り、バックヤードにある更衣室で、急いで服を着替えてから、あとは家に帰るだけなのに、無駄に鏡をチェックする。どうせ外は真っ暗だし、さして変わりはないのだが、昨日買ったばかりの新しいリップを付けてから、もう一度だけ鏡を見て、店の裏口から外に出た。

「ごめん。お待たせしました」

裏口を出てすぐの、店の外壁にもたれかかりながら、特に何をするでもなくそこに立っていた轟くんにそう声をかけると、彼は少しだけ困ったような顔を浮かべた。

「毎回言ってるが、そんなに待ってねぇから。もっとゆっくり支度していいぞ。よく分かんねぇけど、女は色々身支度があるんだろ?」
「どこで仕入れたの?そんな情報」
「クラスの奴が言ってた」
「ふふ、何それ」

私がくすりと笑ってみせると、轟くんはその理由が分からなかったのか、不思議そうな顔を浮かべて、軽く首を傾けた。

「面白いか?今の話」
「うん。割と。時々話に聞いてるけど、雄英の人たちって、やっぱり面白いよね」
「まぁ…個性的な奴は多い…かもな」
「君もね」
「そうか?」
「そうだよ」

さらによく分からないといった表情を浮かべながら、轟君はまぁいいか、と小さく呟いて、一歩足を前に出した。私もそれに続き、足を一歩踏み出して、彼の隣を歩き始めると、刺すような風が頬を掠めた。隣を歩く轟くんの顔を、ちらりと横目で盗み見ると、街灯に照らされた彼の高い鼻筋が、ほんのり赤くなっているのが見える。

何度見ても、ほんとに綺麗な顔してる。

きっとこれは、一種の奇跡だ。もちろんそんな映画のようなセリフは、とても口には出来ないけれど、私にとって、こうして彼の隣を歩いていることは、まさしく奇跡と呼べる出来事だった。







幼い頃に父が亡くなり、女手一つで、私を必死に育ててくれた母。そんな母の力になりたくて、高校入学と同時に、叔父が店長を務めるコンビニで、アルバイトとして働くことになった。
店の仕事にも慣れ、今の店で働くようになってから、4ヶ月ほど経った頃、夜でもじわりと汗が滲むような、そんな暑い真夏の夜、私は彼と出会うことになる。

『じゃあ叔父さん、私帰ります』
『お疲れ様。気をつけて帰るんだよ』
『はい。お疲れ様でした』

いつものように、店の裏口のドアノブに手をかけた瞬間、後ろからふと、叔父が私の名前を呼んだ。

『なに?』
『そういえば、ちょっとここから離れてるけど、最近駅の周りで痴漢が出たらしいから、なまえちゃんも気をつけてね』
『大丈夫大丈夫。私なんか襲う人いないって』
『そんなの分からないでしょ。とにかく、寄り道しないで真っ直ぐ帰るように』
『はいはい』

適当にそんな返事をしてから、店の裏口のドアを開けると、熱気を帯びた重たい空気が、肌に不快に纏わりついた。早く帰ってお風呂に入って、クーラーの効いた涼しい部屋で、録画しておいたドラマを観たい。そんなことを頭で考え出す頃には、叔父の話はすっかり頭から抜け落ちていて、私は慣れたその家路を、一人急ぎ足で歩き始めた。

先週微妙な終わり方してたけど、今週どうなってるんだろう。

既にリアルタイムでの放送は終わっているので、ネットで調べれば展開は分かってしまうのだが、自分の目で確かめるまではと、スマホは鞄に入れたままにして、ただひたすらに歩いていた。
するとしばらく道なりに進んだところで、こつこつこつとアスファルトを叩く、誰のものか分からない足音が、ひとつ増えていたことに気がついた。最初は特に気にも留めず、そのまま歩き続けていたが、どんどん音が大きくなり、明らかにこちらに近づいてきているのを感じ、歩く速度を早めると、後ろにいるであろうその人物も、同じように歩くスピードを加速させた。

まさか、痴漢…?

叔父の話では、痴漢が出たのは駅前の辺りだということだったが、そういう類の犯罪者は、捕まらないように拠点を転々とすることがあると、なにかのドラマで観たことがある。そんな思考にたどり着いた瞬間、辺りは熱気に満ちているのに、背筋がぞくりと震え上がった。

やだ。どうしよう。
どこか逃げられる場所は ───

歩くスピードはそのままに、辺りをきょろきょろ見回していると、一体いつの間にそこまで来ていたのか、突如肩を掴まれた。

『い、嫌…っ!!』

先ほどの比ではないほどに身体が震え上がり、私はぎゅっと目を瞑りながら、掴まれた場所とは反対の肩にかけた鞄を、後ろに向かって思い切り振り回した。

『ちょ、待っ』

目を瞑っているので、相手の顔は見えないが、焦ったようなその声からは、思ったよりも若い印象を受けた。

『いやっ、来ないで…っ、あっち行って…!』
『落ち着けって…!これ拾っただけだから…!』
『え…?』

恐る恐る瞼を開くと、そこに立っていたのは、私とそんなに歳も変わらない、制服を着た男の子だった。暗い夜道でもはっきりと認識できる、左右非対称な髪と瞳の色が特徴的で、すごく整った顔をしている。

『拾った…?』
『お前のだろ?これ』

彼はそう言いながら、すっと腕を伸ばしてみせた。その手にゆっくり視線を落とすと、いつの間に落としていたのか、そこには私のスマホがあった。

『あ…』
『違ったか?』
『い、いえ…私の、です…』
『だよな。信号待ちの時、鞄から落としてたぞ』

少しため息混じりにそう呟くと、彼はさらにそれを前に突き出して、私にスマホを受け取るように促した。

『あ、ありがとうございます…あの、ごめんなさい…鞄をぶつけたりして…』
『一体、俺を何と間違えたんだ』
『えっと、その…ち、痴漢かと、思って…』

正直にそう答えると、彼はぱちくりと瞬きをして、私のことをまじまじと見た。

『…………一応、これでもヒーロー志望なんだけどな』
『ご、ごめんなさい!あの、け、怪我とかは…っ』
『いや、これくらいなら受け身取れるから』
『受け身…?』
『簡単に言うと、身体に受けるダメージを軽減したりする姿勢、みたいな感じだ』
『はー…すごいね。そんなこと出来るんだね…』

そういえば、この制服って…

『もしかして、雄英のヒーロー科の人…?』
『あぁ』
『わ!じゃあ"エリートくん"だ!』
『俺はそんな名前じゃねぇ』
『それは…うん。さすがに分かるかな…私でも…』

真顔でぴしゃりと私の発言を否定する彼に、思わず自然と苦笑いが浮かぶ。

かっこいいけど、この人少し天然なのかしら…。

『あれ…でも確か、雄英って去年から全寮制になったんでしょ?なんでこんな所にいるの?』
『インターンの帰り。普段はここ通らねぇけど、急いでたから近道しようと思って』
『インターン?』
『まぁ、給料の出ねぇバイトみてぇなもんだ』
『プロヒーローの事務所で働いてるってこと?』
『そういうことだ』
『雄英って、やっぱりみんな優秀なんだね。学生の頃から、そんなふうに現場にいるなんて…』

普通高校の普通科の一般生徒である自分には、一切無縁の世界である。自分の生活でいっぱいいっぱいな私からすれば、人を助ける仕事に自ら就こうとしている彼は、純粋にすごい人だと思った。

『ところでお前こそ、なんでこんな時間にウロウロしてんだよ』
『私は、バイトの帰りで…』
『痴漢が出るようなところで、女子がバイトすんなよ』
『その話聞いたの、今日の帰り際だったの。叔父さ…バイト先の店長さんがそう言ってて…あ、出たのはこの辺じゃなくて、駅前の辺りらしいんだけど…。でもその話を聞いてたから、もしかしてって思っちゃって…』
『そして俺は、痴漢に間違われて殴られたわけだな』
『申し訳ございませんでした…』

深々と頭を下げると、彼は小さくため息をつき、いいから頭を上げてくれと、呆れたようにそう呟いた。

『……家はどっちにあるんだ』

おずおずと頭を上げてみると、彼は少しの間を置いてから、そんなことを私に尋ねた。

『この道を真っ直ぐ行くだけだけど…なんで?』
『なんでって…送ってくからに決まってんだろ』
『え!?』

さらりとそう口にした彼に、そこそこ夜も遅いというのに、思わず声を上げてしまった。

『い、いやいや…っ、いいよそんなの!初対面の人にそんなこと…』
『本当に襲われたらどうすんだよ。捕まってねぇんだろ。本物の痴漢は』
『それは、そうだけど…』
『いいから。黙って言うこと聞いとけ。ほら行くぞ』

彼はそう言うと、半ば無理やり私の手を引いて、さきほど私が示したその道を、すたすたと歩き始めてしまった。

『ちょ、ちょっと待って…!エリートくん歩くの速い…っ』
『轟焦凍』
『え、何…?』

耳に届いたその言葉の意味が分からずに、小さくそう聞き返すと、彼はぴたりと立ち止まって、軽くこちらを振り向いた。

『エリートくんじゃなくて、轟焦凍。お前は?』

少し高い位置から、彼は再び自身の名を呟くと、ぽつりと私にそう尋ねた。その視線に、なぜか胸がドキドキして、確信めいたとある予感が、私の中に芽を出した。

『え、えと…みょうじなまえ、です…』

私がそう答えると、その理由は定かではないが、彼はふっと軽く笑って、そうか、と小さく呟いた。

それが彼、轟くんとの出会いであった。







今となっては失礼極まりないが、彼を痴漢と間違えたことをきっかけにして、私と轟くんの、不思議な関係が始まった。普段は通らないと言っていたのに、なぜか彼はその道を通って、時折私のバイト先に顔を出すようになったのだ。そしていつの頃からか、私のバイトの終わり時間に合わせてやって来た彼が、私を家まで送って帰るというのが、私の"普通"になりつつあった。

「轟くんって風邪とかひくの?」
「それは俺が馬鹿かどうかを聞いてるのか?」
「ち、違うよ!純粋な疑問で…っ、」
「だろうな。知ってた」
「もー、すぐそうやって人のことからかう!」

母子家庭で育ったからか、昔から男子に苦手意識があり、学校の男子とはあまり話さない方なのだが、なぜか轟くんだけは、不思議と自然に話が出来た。顔立ちが中性的で綺麗だからか、それとも学校の男子と比べて、クールで落ち着いているからか。それとも。彼の隣は心地良くて、そんな自分の感情が、恋であることに気づくまでには、そんなに時間は要さなかった。

「俺でも風邪はひくぞ。普通に」
「やっぱりあれなの?50℃くらいになったりするの?」
「他の奴と変わんねぇぞ。暑さや寒さに強いだけだ」
「そんなに都合良くはいかないってことか…」
「去年なんか、誕生日に風邪ひいたしな」
「それはまた…なんとも…というか、そういえば私、轟くんのお誕生日知らないけど、いつなの?」
「1月11日」
「なるほど。冬の方だったのね」
「は?」
「いや、こっちの話」

その名前から、夏か冬のどちからだろうとは思っていたのだが、どうやら冬の方だったらしい。

「でもちょっと待って…今日が7日でしょ…あと4日しかないじゃない!先に言ってよ!」
「いや、この歳で自分の誕生日を大々的に言うのは、あれだろ」
「そう?別にダメじゃないと思うけどね」
「別にもう祝うような歳でもねぇし」
「うわ、おじさんみたい!」
「言っとくけど、俺がおじさんなら、なまえもおばさんってことになるからな」
「ちょっと!私まだ高校生なんですけど!」

じとりと彼を睨みつけると、轟くんは私の顔がおかしかったのか、くつくつと喉を鳴らしながら、肩を震わせて笑ってみせた。普段淡々としている彼の笑顔はとても貴重なので、思わず胸がきゅんと鳴ってしまう。

ちくしょう。
そんな顔されちゃったら、許しちゃうじゃない。

「まぁ、それは一旦置いといて…轟くん、何か欲しいものとかある?お誕生日」
「……特には」
「じゃあ、食べたいものとかはどう?」
「あー…あれ」
「あれ?」
「前になまえが言ってた、立って蕎麦食えるとこ」
「あぁ、立ち食い蕎麦?」
「それだ。そこで蕎麦食ってみたい」

そうだった。
この人、ウルトラ級のお坊ちゃんだった。

誕生日に立ち食い蕎麦というのは、なかなか不思議なチョイスであるが、期待に満ちた眼差しでそう口にする轟くんに、首を縦に振る以外の選択肢があるだろうか。いや、ない。

「じゃあ、一緒に行く?お蕎麦屋さん」
「いいのか?」
「回転率重視のお店だから、そんなにとびきり美味しいわけじゃないと思うけど…それでも良ければ…」
「行く」
「いつにしようか?お誕生日前後で、空いてる日があればそこで…」
「当日じゃダメなのか?」

さすがに当日を一緒に過ごしたいというのは、あまりに欲張りな気がするので、そこを外して打診したのだが、轟くんは不思議そうな顔をしながら、そんなことを尋ねてきた。

「え、でも…当日は家族とか、学校の友達とかと過ごすんじゃ…」
「そんな予定はねぇ」
「そうなの?」
「あぁ。だからお前のバイトさえなければ、その日でどうだ」
「11日はシフト入れてないから、大丈夫だけど…」
「決まりだな。じゃあ11日で」

彼はそう言うと、珍しく顔を綻ばせながら、嬉しそうに笑ってみせた。軽く笑った顔でさえ、とても貴重なものなのに、初めて見せてくれたその表情に、顔がとても熱くなった。それが私に対してでなく、未知なるものへの好奇心によるものだと、分かっていても。

けど、ひょっとしたらひょっとする、なんてことも…ある、のかしら。

考えてみれば、本当に他意のない相手を、毎回わざわざ迎えに来て、家まで送ったりするだろうか。自分が彼に好かれる要素があるかと聞かれれば、正直それはノーなのだが、芽生えた期待に縋りたくなってしまうのが、乙女心というもので。

「なまえ」
「は、はい…!?なんですか…!?」
「いや、もう着いてるぞ。お前ん家」

ハッとして目を見開くと、そこは彼の言うとおり、いつもの我が家が佇んでいた。

「ご、ごめん…なんかぼーっとしてて…」
「どうしかたのか?」
「べ、別になんでも…」
「ならいいが。じゃあ、後でまた連絡するから」
「う、うん…今日もありがとね。送ってくれて」
「俺がしたくて、やってるだけだから」

ねぇ、どうしてそういうこと言っちゃうの。
勘違いを、したくなるじゃない。

「も、物好きだね。轟くん」
「そうか?」
「そうだよ」
「……まぁ、そう言われればそうかもな」

轟くんは少し考えるような素振りをすると、俯きがちにそう言った。相変わらずのポーカーフェイスに、その真意はまるで汲み取れず、期待してしまったり不安になったり、ちょっと心が忙しい。

でも、好きなんだよなぁ。そういうとこも。

よく分からない不思議なところも、魅力的で惹かれてしまう。私の知らない良いところも、悪いところも、もっともっと知りたいと、そう思わせてしまうのだ。

「ところで」
「ん?何?」
「今さらだが、お前もそろそろ名前で呼んだらどうだ。俺のこと」

そんなことを考えていると、一体何をどう思ったのか、轟くんは唐突に、そんなことを言い出した。

「な、名前ですか…」
「俺は名前で呼んでんのに、お前が苗字呼びだと、なんかアンバランスだろ」
「それはまぁ、そうなんだけど…なんか、轟くん呼びが染み付いちゃって…」
「じゃあ試しに、一回呼んでみろ」

いつもの淡々とした表情で、なかなかの無茶振りをしてくる彼に、思わず顔が引きつった。

「い、今?」
「今」
「……どうしても?」
「どうしても」
「な、なんで急に…」

理由を尋ねてみようとすると、轟くんは眉をひそめて、少しむっとした顔をした。この顔は、いいから早くさっさとやれと、そう思っている時の表情だ。分かりにくい時は、感情の機微を一切感じ取らせてくれないのに、逆に分かりやすい時は、びっくりするほど顔に出る。轟焦凍という人は、その存在がアンバランスだ。

「しょ…うと、くん」
「途切れたからもう一回」
「厳しくない!?」
「いいから。早くしろ。門限きちまう」

門限を逆手にとるとは、些か卑怯ではなかろうか。そんなことを思いながらも、私は冷たい空気を吸い込み、肩を落として唇を開いた。

「……焦凍くん」

なんだこれ。恥ずかしい。
恥ずかしいにも程がある。一体何の罰ゲームだこれ。

「こ、これでいいでしょ…」
「ん。じゃあ11日は、ずっとその呼び方な」
「は!?そんなの無理に決まって」
「その呼び方じゃねぇと、返事しねぇからな」
「ご、強引すぎない…?それ…」
「そういうわけだから。11日、よろしくな」
「人の話聞いて!?」

私が必死にそう詰め寄ると、彼はまたくつくつと笑いながら、私の頭をぽん、と叩いた。そんな仕草にうっかりときめいて、思わず顔を逸らしてしまう。

「冗談だ。嫌なら無理して呼ばなくていいから」
「べ、別に嫌では…ないけど…れ、練習しないと出来なさそう…」
「期待しないで楽しみにしとく」

じゃあまたな、と口にすると、轟くんは踵を返して、来た道をそのまま戻って行く。帰り道でもない我が家への帰路を、わざわざ一緒に帰ってくれる、そんな不思議な彼のことを、こうして一緒に過ごす度に、私はどんどん好きになるのだ。







立ち食い蕎麦に連れて行くと、そう約束はしたものの、それを誕生日のプレゼントにするのは、さすがにちょっと気が引けた。何より、せっかく彼の誕生日を一緒に過ごせることになったのだから、どんな些細なものだとしても、形に残る何かが欲しかった。

と思ってきてみたものの、男の子って、何を貰ったら嬉しいんだろう…。

日曜日だからか、なかなかの賑わいを見せるデパートのメンズフロアを、ぐるぐる回り続けること、はや2時間。言い訳になってしまうのだが、男子とほとんど関わってこなかったせいで、同じ年頃の男子の欲しいものが、全くもって分からない。彼氏のいる友達曰く、財布やアクセサリーなど、身につけるのものをあげることが多いらしいが、よくよく考えてみなくとも、私と彼はただの友達だ。そんなものをあげてしまったら、逆に気を遣わせてしまうかもしれない。

どうしよう。何をあげるのが正解なんだろう。

「贈り物ですか?」

途方にくれてため息をついていると、立ち止まっていたアパレルショップの店員さんが、優しく話しかけてくれた。おそらく20代くらいだろうが、柔らかそうな笑顔を携えたその顔立ちは、ずいぶん落ち着いた印象を受けた。

「友達のお誕生日なんですけど、何をあげたらいいか分からなくて…」
「なるほど。さっきから迷っていらっしゃるみたいだったので、つい声をかけてしまったんですが…おいくつぐらいの方ですか?」

縋り付くように悩みを打ち明けた私に、店員の男性は落ち着いた様子で、穏やかにそう尋ねてみせた。

「私と同い年で…16歳なんですけど、あ、誕生日が来ると17歳で…」
「ちなみに、ご予算はどれくらいでしょう?」
「逆に質問しちゃうんですけど…友達だと、どれくらいの金額であげるのが普通なんでしょうか…?」
「そうですね。当店のお客様ですと、3000円くらいのプレゼントが多いでしょうか…」
「じゃあ、それくらいで…」
「それでしたら、マフラーや手袋などはいかがでしょう?」

店員さんの言葉を聞いて、彼のことを思い出す。制服姿しか見たことはないが、轟くんはその個性からか、こんなに寒い真冬でも、マフラーや手袋はしていなかった。

手袋だと、うっかり灰にされかねないけど、マフラーだったら大丈夫かな…?

暑さや寒さに強いとは言っていたが、普通に風邪をひくこともあると言っていたし、気に入らなくてもそんなに大きなものではないから、そこまで邪魔にはならないだろう。

「じゃあ、マフラー見せて貰ってもいいですか?出来ればシンプルで、柄とかあんまりないやつがいいです」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
「は、はい…っ」





「ねぇ焦凍、この後クレープ食べに行こうよ!」

店員の彼に言われるままに、店内に足を踏み入れようとした、その時だった。聞き覚えのあるその名前に、自然と顔を傾けた瞬間、どくん、と心臓が嫌な音を立てて、足が凍りついたように動かなくなった。
わずか数メートルほど離れた先に、私とはまるで正反対の、とても可愛らしい女の子と歩く、彼の姿を見つけたからだ。

「さっき飯食ったばっかだろ」
「買い物付き合ってあげたでしょ?」
「勝手についてきただけだろ。あと、そんなにくっつくなって言ってんだろ」
「えー、いいじゃん!いずれ結婚するんだから」
「だから、それは親が勝手に言って ───」

そう言いかけた彼の視線が、私のそれとぱちりと重なる。轟くんはぴたりと足を止め、今まで見たこともないような驚いた顔で、私の方をじっと見ていた。

「焦凍?どうしたの?ねぇ、焦凍ってば!」

そんな彼を不思議に思ったのか、隣に立っていた女の子は、彼の名前を口にする。呼んで欲しいと言われたから、昨日何度も練習して、何とかなるかもしれないと、やっとそう思えるようになった、その名前を。彼女はいとも簡単に、何度も口に出来ていて。

「…っ」

自分の胸に抱いた期待が、音を立てて崩れていく。優しいお店の店員さんが、心配そうに私に声をかけてくれたのに、その言葉ですらもう辛くて、私は背中を翻し、逃げるようにその場を去った。

なんだ。そういう相手、ちゃんといたんだ。

言ってくれれば良かったのに。そうすれば、無駄な期待を抱くことも、誕生日の約束に浮かれることも、こんなに悲しくなることだって、なかったのに。




「なまえ、ちょっと待てって!」

急いで階段を駆け下りて、最後の踊り場まで来たところで、後ろから勢いよく腕を捕まれる。泣くのを必死に堪える顔を、好きな人には見られたくなくて、必死にそれを隠すように、無機質な床に視線を落とした。

「さっきの、あいつは…その…」

気まずそうに話す彼に、さらに心を突き刺された。はっきりとは否定してくれないその言葉に、自分の失恋が確定したことを、決定的に突きつけられたような気がした。

「彼女いたなら、そう言ってくれればよかったのに」
「いや、そういうわけじゃ」
「でもあの子言ってたよ。『いずれ結婚する』って」
「それは親が勝手に言ってるだけで」
「へぇ、良かったね。自分で探さなくても、あんな可愛い子がお嫁さんになってくれるなんて、勝ち組じゃない」
「俺はそんなつもりは」
「まぁ別に、ただの友達の私には、轟くんが誰と結婚しようが、関係ないですけど」

思ってもいない嘘を並べて、自身の腕を掴むその手に触れた。初めて自分から触れた彼の手は、思ったよりも冷たくて、それが少し意外だった。

「離してもらえる?もう帰りたいの」
「なまえ…っ」
「誕生日だって、私なんかと会わなくたって、あの子がお祝いしてくれるよ」
「なぁ、ちょっとでいいから、話聞けって」
「冗談でしょ。あなたと話すことなんか、何もないから」

自ら初めて触れたその手を、力いっぱい叩き落とすと、彼はまた目を見開いて、私の方に視線を向けた。綺麗な二つの瞳の奥が、ほんの少しだけ泣きそうに見えたのは、きっと私が心のどこかで、まだ身の程知らずな期待をしているからだ。

「もう絶対…っ、二度とバイト先に来ないで…っ!」

最後の最後で気持ちが溢れて、彼を思い切り睨みつけながら、そう吐き捨てて階段を下りた。涙で視界がぐらつく中、なんとかデパートを後にすると、外は薄暗くなり始めていて、駅に向かって歩いていると、滲む視界の片隅に、眩い光が映りこんだ。そっと手の甲で涙を拭うと、鮮明になった景色の中に、オレンジ色の綺麗な夕日が、悲しいくらいにきらきらしていた。








「失恋したぁ!?」

声を張り上げる友人を、じとりと横目で睨みつけると、彼女は肩を竦めながら、ほんの少しだけ身を縮めた。

「でもなんで?聞いてた感じ、めっちゃいい感じだったのに…」
「向こうに婚約者がいたの」
「高校生で婚約者って…どこの坊ちゃんなのよそいつは…」
「現ナンバーワンヒーローの坊ちゃんだよ」
「え、そうなの!?聞いてないんだけど!!」
「言ってないもん。変な噂とか流されたら嫌だし」
「ほへー…そんな大物だったとは…」

信じられない、と言った様子で、彼女は口をあんぐりさせた。

そういえば、初めて轟くんのお父さんのことを聞いた時、私もすごいびっくりしたっけ。

雄英高校といえば、この辺りでその名を知らない人がいないくらいの有名校だが、私も彼と知り合うまでは、制服のデザインくらいしか、きちんと認識出来ていなかった。

まぁ、もう関わることもないだろうけど。

「奪っちゃえばいいのに」
「は?」

突然恐ろしいことを口にした女友達に、今度は私の口がぽかんと開いた。

「だって婚約者なんてさ、どうせ本人が選んだわけじゃないんでしょ?そんなのに縛られて自由に恋愛出来ない人生なんて、楽しくないじゃん」
「まぁそれは、一理あるかもしれないけどさ」
「でしょ?どう甘く見積ったって、彼はなまえのこと好きだったと思うけどなぁ」
「そんなことないよ。現にあれから、連絡何も来てないし」

あのデパートの一件以来、彼は私が言った通り、バイト先に顔を見せなくなったし、数日おきには来ていた電話やメッセージも、あの日を境に来ることはなくなった。

「それに、一緒にいた子、すごく可愛かったもん」

隣を並んで歩く姿が、とても自然に見えていた。かっこいい人の隣にいるのは、こんなそこら辺の普通の女ではなく、やっぱり可愛い女の子なのだ。

「それは見てないから分かんないけどさー、その子のことが好きだったら、わざわざなまえに会いにこないじゃん」
「もういいんだって。どうせきっと嫌われたし」

あんな最高に可愛くない態度をとった女なんか、私が男でもお断りだ。付き合ってもいなければ、好きだと言われたわけでもない、勝手に自惚れて勝手に傷ついて、泣きわめいていなくなった女のことなど、きっとすぐに忘れるだろう。

「まぁそういうわけだから、今度誰か良い人いたら、紹介してよ。じゃ、私これからバイトだから」

彼女はまだ何かを言いたげな様子だったが、私は手のひらを軽く揺らして、一足先に教室を出た。彼の話をすればするほど、記憶が思い出に変わってしまいそうで、それがなんだか寂しくて、これ以上話は出来なかった。

嘘ついちゃったな。最低。

バイトなんて、大嘘だった。なぜなら今日が、1月11日だからだ。もしもあの日、轟くんと偶然あの場で居合わせなければ、もしかすると今頃は、二人でいつものように並んで歩いて、一緒にお蕎麦を食べに行っていたのかもしれない。

やめよう。ありもしない"もしも"の話なんて、考えたところで意味はない。

首を何度も横に振り、下駄箱で靴を履き替えて、昇降口を後にする。するとどうしたことか、校門に少しずつ足を進める度に、なぜか人が増えていく。

今日って、なんかあったっけ…?

「ねぇ、あの人超かっこよくない?」
「ね!誰かの彼氏かな。いいなぁ。あんなかっこいい彼氏が、学校まで来てくれるなんて」

ぼんやりと頭に疑問符を浮かべていると、すれ違いざまに聞こえた女子たちの声に、それはすぐに消え去った。いつもよりも人が多いのは、かっこいい人を少しでも目に焼き付けたいという、ミーハーな乙女心によるものらしい。
そんなにかっこいい人なのだろうか。ざわつく女子の数を見るに、なかなか見た目にインパクトがありそうな気がするが。

まぁでも、見た目のインパクトなら、轟くんに勝る人はそうそういないよね。たぶん。

その整った涼やかな顔立ちはもちろんだが、左右非対称の紅白色の髪の毛に、水色とグレーの綺麗な瞳。見れば見るほど、それらはまるでおとぎ話の登場人物のようで、私はいつも惹き付けられた。

あ、どうしよう。また泣きそう。

鼻の奥がツン、として、心がズキズキと痛む。熱くなっていく目頭を、隠すように俯くと、瞼に溜まった水滴のせいで視界がゆっくりとぼやけ始めた。

「なまえ…っ」

そう、こんなふうに、いつも名前を呼んでくれる。
そんな彼が、私は ───




「なまえ!」

もう一度、今度ははっきり聞こえた声に、咄嗟に顔を上げてみると、今は夜でもないはずなのに、すぐ目の前に彼がいた。そしてなぜかその頬には、大きな湿布が貼られている。

「ど、して…」

なにこれ。夢?幻覚?一体何が起こってるの?

「……約束」
「え…?」
「約束、しただろ。今日、立ち食い蕎麦、一緒に行ってくれるって」

混乱する私を余所に、けして果たされないはずの、些細で小さな約束を、彼は堂々と口にした。

「で、でも、あれは…もう…」
「俺も、お前も、行かないなんて言ってない」

まるで子供の屁理屈のように、轟くんは口を尖らせて、突然そんなことを言い出した。

「いや、それはそうだけど…っていうか私、もう二度と来ないでって…」
「バイト先に来るなとは言われたけど、学校に来るなとは言われてねぇ」
「まぁ、確かにね…それは、そうだけどもね…」

確かにそれはそうなのだが、普通あんなことを言った相手の学校に、のこのこやって来れるだろうか。下手をすれば火に油を注ぐかもとか、もっと責められるかもしれないとか、そんなふうには思わないのだろうか。

それに、何よりも。

「あの子は、いいの…?」

恐る恐るそう尋ねると、彼はあの日と打って変わって、全く顔色を変えることなく、はっきりと首を縦に振った。

「ちゃんと、断ってきた。親父にも、あいつの家にも、あいつにも、ちゃんと言った。好きな奴がいるって」

胸の奥に、またもや小さな期待が芽吹く。だって絶対そんなこと、ただの友達に言ったりしない。

「それ、は」
「お前のことだよ」

あぁ嫌だ。涙でぐちゃぐちゃの顔なんて、絶対絶対可愛くない。それなのに、溢れで溢れて止まらない。

「誕生日も、この先の人生も、誰と一緒にいるかは、俺が自分で決めるんだ」

轟くんはそう言うと、泣きじゃくる私の手を引いて、自分の方へと引き寄せた。背中に力強い腕が回され、ぎゅっとそのまま抱きしめられれば、胸の内にあった嫌なものが、全て溶けてなくなっていく。

「なまえのこと、好きなんだ。今日も、これからも、お前と一緒がいいんだ」

ここが学校の正門だとか、そんなことはもう、頭になかった。そう口にした彼の方を、顔を上げて見つめると、轟くんは私の頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけた。

「私も、好きだよ」
「ん。知ってる」

まるで引き寄せ合うように、互いの唇がそっと触れた。その瞬間、さらに強く抱き寄せられて、本当にほんの少しだけ、背中に愛しい痛みが走った。







「これが立ち食い蕎麦か…!」

目を輝かせる彼の横顔に、思わずぷっと吹き出してしまう。

「ふふ、伸びないうちに早く食べよ」
「ん。そうだな」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」

最初のデートが立ち食い蕎麦屋というのは、なんとも色気のないチョイスだが、一緒に並んでこうしているだけで、とても幸せな気持ちになれた。

「どう?美味しい?」
「美味い。これで400円なんて、太っ腹過ぎねぇか」
「あはは、そういうビジネスだからね。こういうお店は」
「学食のより美味いかもしれない」
「いやー…ランチラッシュのよりは、さすがに美味しくできないんじゃないかな…」
「じゃあ、きっとお前がいるからだな」
「え…」
「なまえと一緒にいるから、美味くなるんだ。きっと」

不意打ちでそんな甘いことを言い出した轟くんに、思わず顔を両手で覆った。

「不意打ち、ダメ、ゼッタイ…」
「は?」
「轟くんは、なんか色々ずるい…」
「……"轟くん"じゃねぇだろ」

不機嫌そうな声が聞こえて、咄嗟に両手を顔から離すと、彼はむすっとした顔で、蕎麦をそのまま食べ続けていた。

「……焦凍くん」
「ん。それでいい」

満足気な顔を見せる彼に、嬉しく思いつつも、やっぱり何だか照れくさくて、顔の中心に熱が溜まった。

「と、ところで焦凍くん、その顔の湿布、どうしたの?」
「あぁ、これか?殴られた」
「は!?」

あっけらかんとそう口にした彼に、咄嗟に大きな声をあげると、周囲の人たちは驚いたのか、各々肩をビクつかせていた。

「な、殴られたって…もしかして…」
「こないだ一緒にいた奴にな、思いっきり平手打ちされた」
「なんか…ごめんね」
「別にお前が謝ることじゃない。俺が勝手にお前を好きになって、その落とし前をつけただけだ」

そう言うと、轟くんは勢いよく再び蕎麦を啜り上げ、あっという間に完食してしまった。

「で。お前が食い終わったらの話だが、これからどうすっか」
「あ、じゃあさ、プレゼント一緒に買いに行こうよ」
「プレゼント?」
「お誕生日のプレゼント」

私がそう口にすると、焦凍くんは腕を組んで、少し目線を上に向けた。

「いや、いい」
「え」
「もう充分、貰ってるから」
「何もあげてないよ?」

そんな疑問を投げかけると、彼は小さくふっと笑って、私の頭に手を置いた。

「俺はお前でもう充分」

今まで見た中で、一番幸せそうな笑顔を浮かべて、彼は私にそう呟いた。とんでもない破壊力を込めたその一撃に、思わずテーブルに額を叩きつけると、そんな私をくつくつ笑い、焦凍くんはもう一度、私の頭に手を置いた。


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お誕生日おめでとう。だいすきだよ。
たぶん初めに会った時から、彼は女の子が好きだったと思います。

2022.01.11

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