※名前変換なし、幻太郎出てきません
私は公園が好きだ。
早朝からランニングする人が通り過ぎ。
午前中は近所のご老人達がゲートボールを。
昼を過ぎると幼稚園帰りの子供達で溢れ。
夕方からは小学生が駆け回り。
日が暮れると逢い引きを行う方々が。
時間によって移り変わる人々の後ろでは常に公園にいるような人が空き缶を拾っている。
そんな緩やかな時間の流れる公園で読書をするのが好きだ。
なんで公園事情にこんな詳しいかって?
それは私が時間を持て余した大学生だから、に他ならない。
文系大学の4年生なんて、計画的に単位を取っていれば週に2回講義を受けに行くか行かないかくらいのスローライフを送ることが出来る。
公園のベンチで通り過ぎる人を眺めながら本を読む至福の時間を大学3年の秋頃から週に3、4日。
そんな生活を半年も続けていれば知った顔も出来る。
ここ最近気になっているのは『有栖川帝統』と名乗る不思議なお兄さんだ。
2ヶ月くらい前からたまに見かけるようになって、近頃は公園に来ると2回に1回くらいの頻度で顔を合わせて少し話をする程度の仲。
彼は自分をギャンブラーだと言う。私の読んでる本が気になった、と声を掛けてきたのが最初。
有名なものからマイナーなものまで、幅広く読んでいるのに大体彼は内容を知っていて。題名より先に作者を確認する彼に疑問はあったけれど、本の好みの合う彼と話すのはただただ楽しかった。
彼は知らない。
私が本物の『有栖川帝統』と面識があることを。
私が公園での読書を習慣にし始めた頃に出会った帝統。彼にとって公園は寝床のひとつ。
ある日大負けしたらしく、素寒貧になって公園で寝泊まりしていた彼に「有栖川帝統を名乗る人物と出会った」と相談したら、呆れた顔をしたあとで「ゲンタローの奴、何やってんだ」と笑っていた。
帝統から、同じFlingPosseのメンバーなのだ、という事は聞いた。
それ以上のことは聞いていない。
だってどうせなら彼の口から聞きたいじゃないか。
何故嘘を吐いて、名前を偽って、声を掛けてきたのかと。
帝統はもう一つだけ教えてくれた。
「アイツ、誕生日4月1日なんだってよ」
なんだそれ、って笑いたくなる。嘘吐きな彼の誕生日がエイプリルフールだなんて。
もしかして、帝統も嘘の誕生日を教えられているんじゃないかとも思ったけど、仮にも同じチームのメンバーにそこまではしないだろう。
今日はその4月1日。
公園の桜の木の下で読書をしながら彼が来るのを待ってみようと思う。
彼が来たら今度こそ本当の名前を聞いて、誕生日を祝いながら本の話がしたい。
「一番好きな作家さんの本は、とても大事にしてるので家から持ち出さないようにしてるんです」
って。