2003年8月20日

ここ最近、圭介は一虎と一緒に真一郎くんのお店でお手伝いをしている。よく知らないけど、何か悪さをしたその罰らしい。オイルまみれはあんまりうれしくないけど、罰が真一郎くんのお店のお手伝いなのはちょっと羨ましい。マイキーはその圭介たちの悪さの件でまだちょっと怒ってるみたいだけど、20日は圭介も一緒に行くことになってるから、きっと大丈夫。

毎年、マイキーのお誕生日にはエマが張り切ってご馳走を作る。今日は家から出られないエマからお使いを頼まれていて、駅前のケーキ屋さんに予約のケーキを取りに行くことになっていた。圭介がピザを買っていくっていうからピザを注文して、ケーキを受け取りにいく。それからもっかいピザ屋さんに戻って、準備が整ったら二人で佐野家に向かう。
お家へ着くと真一郎くんが出てきて「堅はもう来てるよ」って教えてくれた。去年もこのメンバーだったから今年もそうかな。それか6月に万次郎会だっけ、自分たちのチーム作ってたからそのこたちが来るのかもしれない。
真一郎くんに連れられるままテーブルを並べてる居間に顔を出して、マイキーにおめでとうって先に声をかける。「プレゼントは?」って催促されたから「あとで!」って伝えて、師範とドラケンに挨拶してからケーキとどら焼きを持ってお台所へ向かう。

「あ、ベルきたー!ちょっと手伝って!」
「冷蔵庫にケーキいれるから待ってー」
「そのまま、たまご1こ取って」
「はーい」

どうやらお誕生日会には万次郎会──ほんとは東京卍會っていうらしい──の男の子たちが来るらしくて、からあげをたくさん用意してるんだけど、ちょうど繋ぎのたまごがなくなったとこだったみたい。言われるままにたまごを割ってシャカシャカ溶く。それからポテトサラダ用の少し冷めかけたじゃがいもを言われるままに皮をむいて潰していく。男の子たちは何をしてるのか知らないけど、ドタバタ音が響いてる。家の中で暴れるなら道場で遊べばいいのに。
ごはんの用意ができあがったら、マイキーのすきなものがテーブルいっぱいに並んでいた。圭介もだけど、男の子たちはお菓子とか食べ物をプレゼントとして持ってきてて、食べきれるのかと心配になった。でもみんなたくさん食べて、余ったのはほんの少しだけだった。みんなすごい。
食べたあとはスマブラとかマリカとかに混ぜてもらったけど、真一郎くんとミツヤくんは手加減してくれても他のみんなは全力でやっていて、わたしもエマもあまり上手くないから負けてばっかりでちょっとだけつまんなかった。エマと部屋に行こうってなったから、真一郎くんと3人でテーブルを片付けたあと、エマの部屋でいつも二人で遊ぶみたいに過ごした。ハゲかけたマニキュアを塗り直して、雑誌のコーディネートをみて、メイクの研究をする。
そうやって過ごしているとあっという間に時間が経って、圭介が帰ろうって呼びにきた。エマは泊まったらって言うけど、圭介は帰り支度──手ぶらだけど──を終えてるし、今日は大人しく帰ろうと思う。思ってたんだけど、「まだプレゼントもらってない」ってマイキーが拗ねて言う。遊ぶのに夢中ですっかり忘れてた…!

「ゴメン、マイキー忘れてた…」
「は?こないだシンイチローにクッキーあげてたじゃん。オレには?」
「ちがう、あるの!冷蔵庫のとこ」

あるってわかったらマイキーはまた大人しくなった。エマの部屋の前で塞がるマイキーの手をとってお台所へ向かう。ゆるく握り返してきた。

「なにくれんの?」
「見るまで待って」

8月に入ってからほとんど毎日作ってたから失敗はしてないとおもう。味見だってした。でも、あんまり期待されるのもこまる。マイキーの反応やわたしの様子を見るためか後ろを着いてくる圭介もエマもニヤニヤ笑ってる。

「圭介うるさい!」
「ハア?なんも言ってねーわ!」
「顔がうるさい」
「ハア?!」

圭介を怒らせてしまったけど、マイキーにも同じようにうるさいって言われて大人しくなった。さすがにお誕生日のマイキーとケンカするつもりはないらしい。
ダイニングテーブルにマイキーを座らせて、みんなに見られる中、冷蔵庫からどら焼きのラッピングバッグをとりだす。

「クッキーって冷蔵庫にいれんの?」
「クッキーじゃなくて、どら焼き」
「どら焼きって作れんの?」

ドキドキしながらマイキーに包みを渡す。マイキーはちょっとだけ、きょとんってしてからすぐに包みを開けはじめた。どら焼きの皮にチョコレートで書いたHappy Birthdayの文字も、スマイリーマークも、ハートや星も、見た感じ潰れてなさそうで安心する。

「ベルすげえ!ありがとな!」

にかっと笑うマイキーの笑顔がまぶしかった。

(20210821)
(20210918)

Happy Belated Birthday Mikey!


High Five!