知ってしまった真実

ヨシノリくんは実はプロサッカー選手だった。

この真実を知ったとき、言葉がでないくらい驚いた。だって、プロってことはそれでご飯を食べているってことだ。てっきりどこかの営業さんだと思ってた。それか消防士さんとかお巡りさんみたいな人。よくジャージで走ってるみたいだし、わたしの中で趣味以外で走る人といえば消防士さんとかだ。
もちろんずっとサッカー部だったのは知っているし、小学生の時にはボールの蹴り方、止め方やドリブルを教わったこともある。だけど自分を可愛がってくれてる人が実はプロ選手だなんて発想普通しない。

ヨシノリくんがサッカー選手だと知ったきっかけは大学で仲良くなった友達にある。その子の付き合いたての彼氏が大学のサッカー部にいて、一人じゃ心細いと言う彼女と一緒に試合を観に行ったのだ。わたしが彼氏と別れたばかりだったから元気づけようとしてくれたのかもしれない。



その日はプロチームとの試合だった。わたしは日本代表の試合くらいしかテレビでみないから、リーグジャパンのことはよくわからなくて、プロだと言われてもピンとこなかった。後から知ったのだけど、うちの大学と試合したのは二部リーグのチームで、なおかつ、そのチームの中でも普段のリーグ戦にあまり出てない人や怪我が治ったばかりの人が出ていたらしいから、普段からリーグジャパンを観ていても知っている選手は少なかったと思う。まあ、それはおいといて。
練習試合の最中、友達は彼氏に釘づけで、正直わたしがいなくても、十分楽しめたんじゃないかと思う。前半が終わったあと、休憩の間はいかに彼がかっこよかったか教えてくれた。後半が始まると何人か選手交代していた。最初は前半と同じようにボールの動く方向を見ていた。しばらくするとわたしはプロ選手の18番の人が気になって、ずっと目で追っていたことに気づいた。短い髪は明るい茶色をしていて、シャキッとした後ろ姿がかっこよかった。他の人よりよく動いていたし、走るのがすごく速かった。人の後ろからビュンと飛び出してパスをもらったり、シュートを狙ったりした。1点だって決めた。
じっと見続けていると、なんとなく見たことある気がしたのだ。たまたま正面から顔を見る気機会があって、言葉をなくした。
ヨシノリくんだったのだ…!

家に帰って、「さかいよしのり」をパソコンで調べた。かろうじてフルネームを覚えていたけれど、漢字は知らなかったから。ヨシノリくんのチームのホームページに「堺良則」という名前の横に顔写真が載っていた。ホンモノだった。
どうしていいかわからない。良則くんと会わない方がいいんだろうけど、それは嫌だ。知らないふりをして今まで通りたまに会ってお話する?でも、ずっとなんて続けられない。良則くんを騙すみたいなことしたくない。困った。ほんとどうしよう。

(20131118)


High Five!