暗雲

最近は好調が続いている。試合に出る度に得点とはいかなくても、少なくとも1アシストはしているし、3試合に1点は決める。本当に波に乗っているとハットトリックだってした。
だけどそれはあくまでもサテライトや練習試合での話で、リーグ戦で活躍の場はなかなか与えられないでいた。どうやら、監督の考えるチーム構想と俺のプレイスタイルがマッチしないらしい。だからといっていつまでもサテライトでくすぶってなどいられない。誕生日がくれば24になるのだ。サテライトでの年齢制限にだって引っかかる。

それと同じように愛実との関係はいいとは言えなかった。帰っても会わないし、会っても俺に対する態度がよそよそしいのだ。ちょっと遅い反抗期かと思ったりもしたが、反抗するも何も親兄弟でもなんでもない。
大学生というのは今までなかった関わりが増えたりするし、なにかと忙しいものだから大して気にする必要はないだろう。もともと愛実と再会するまでは存在を半ば忘れていたような間柄なのだ。
そう頭で思っていても、気持ちは別問題だ。どうやら愛実の存在は俺の生活の深いところまで入り組んでいたらしい。避けられたり、よそよそしいと思うと却って気になった。

実家に帰り、日課のランニングの途中でいつの間にかすっかり見慣れた後ろ姿を見つけた。近頃散々避けられているし、下手に声はかけない方がいいだろう。そう思っていると、偶然後ろを振り向いた愛実と目が合った。

「……良則くん、おかえり、なさい」
「おー、ただいま…ってどうした?!」

あろうことか愛実は突然泣き出した。意味がわからなかった。

(20131119)


High Five!