恩師の結婚式

松井センセ結婚するって聞いた?

そんな話題が出たのは去年の年末に地元の奴らと集まったときだった。松井センセといえば、小学校の頃の年若い担任の先生だ。新卒で入って、俺たちが五年のときにはじめて担任をもって、六年のときも持ち上がりでみてもらった。若かったから、なめてたところも多いが、はじめての担任で試行錯誤の中にも体当たりでぶつかってきてくれたのを子どもなりに感じていたから、俺含めみんな慕っていた。
昔気質というか、人の縁を大切にする人らしく、年賀状や暑中見舞いのハガキは毎年行き来している。俺にはそういうマメさはないから、きたら返すを繰り返す印象が強い。しかし、嫌な気はしない。
招待客は先生の友人から俺たちのような生徒まで幅広い。制服姿の中高生もいているから、今も変わらず慕われているんだろう。
いつの間にかグラスが空になっていた。軽く声をかけて友人の輪から離れた。未成年の数も少なくないからか、アルコールよりもソフトドリンクの種類が多い。元々飲む方ではないし、明後日は試合が控えている。自然とウーロン茶に手を伸ばした。それとほとんど同時に手を伸ばしていたらしいセーラー服の子が手を引っ込めたので、ついでにグラスを手渡してやる。

「悪い」
「いえ、あの、ありがとうございます」
「いや」

高校生だろうか。ぎこちなく微笑むのに短く返した。なんとなくその顔に既視感を覚えてまじまじ見ていると、その女子高生はだんだんと小難しそうな顔に変わっていく。まずった。「悪い、見過ぎた」そう声をかけて、自分もグラスを持って友人の元へ向かった。

(20130930)


High Five!