聖夜の魔法

気がつけば頭の中は良則くんのことばかり。朝起きたとき、大学に行くとき、ご飯を食べてるとき、日常生活を過ごす中で、ぼんやり空を眺めて「なにしてるのかなー」って考えているのだ。今のところ生活に支障はでてないけど、それも時間の問題な気がする。わたしはなんでも器用にできるわけじゃないし、要領だって特別いいわけじゃない。いつだって今そのときにいっぱいいっぱいなのだ。

やっぱり、本当に会わないようにした方がいいのかな。何度もそう思ったけど、良則くんとの関係は変わることはなかった。むしろ会う度にもっと仲良くなってる気がするし、良則くんがいない生活なんて想像できなかった。それくらい、わたしの中で良則くんは大きい存在になっている。大好きで仕方ない。



うまく言葉にできない気持ちをずるずると引きずったまま、冬になった。
12月の半ば、クリスマスが近い今の時期、バイト先の花屋は忙しい。コンサートや結婚式など、なにかとイベントが多いから花束が多くでる。クリスマスの彼女へのプレゼントに花束を選ぶ人もいる。もうすぐ今年も終わりだなあ、なんて悠長なことは言っていられない。毎日が戦場のようなのだ。
だからクリスマスの前後もバイトが詰まっていた。恋人がいなくてクリスマスに働くなんて一見淋しい子だけど、彼と付き合ってたときもそうだったから去年までとあまり変わりない。とはいえ、去年は彼が終わるのを待ってくれてたから、やっぱり淋しい子に変わりないのかもしれない。
5連勤3日め、クリスマス当日は開店からずっと忙しくしていた。予約のあった花束、通りすがりの人、たくさんの人が色とりどりの花を嬉しそうに買って行った。お客さんが喜んでくれるならわたしも嬉しい。あっという間に1日が過ぎ去り、すっかり店仕舞いを終えると、今日シフトに入ってた子はみんな店長からクッキーのクリスマスプレゼントをもらった。毎年のことだけど、店長大好き。
着替え終えて、外にでるととっても寒かった。朝は暖かで歩くと暑いくらいだったのに。マフラーも手袋も置いてきてしまったことを後悔した。ほんと寒い。手のひらに息を吹きかけて、手をこすり合わせる。暖かいのは一瞬ですぐに冷えてしまう。早く帰ろう。ちょっと早足になりかけのわたしを、思いもよらない人が呼びかけた。

「お疲れ、愛実」
「よ、良則くんっ!!?」

なんでここにいるの?って聞けないくらいびっくりしてるわたしにお構いなしで、良則くんは「お前寒くねーの?」と顔をしかめた。わたしが何か言うよりも先に、首もとにマフラーが巻きつけられた。良則くんのにおいだ…!カッと顔が熱くなった気がした。

(20131206)


High Five!