秘め事

良則くんとあてもなくドライブした。国道沿いのイルミネーションを見たり、細い道を通ったり、東京湾まで行ったりと夜道を静かに車は走った。窓越しにカップルや家族連れ、いろんな人ご幸せそうに笑い合うのが見えた。
わたしは助手席でただ黙って車に揺られていた。なにかを話した気もするけれど、緊張しすぎて、正直あまりなにも覚えていない。今まであまり運転するイメージがなかったけど、良則くんの運転が上手かったのはなんとなく覚えている。そして10時頃、家の前まで送り届けてくれた。

「今日はなにも言わなかったな」
「え?」
「いつもは聞かなくても言うだろ、悩んでることとか困ってること。良いこと悪いこと全部」

だって、わたしの今の悩みや心配事って言ったら良則くんのことなのだ。本人に言えるわけない。おまけに二人きりでドライブしたっていうのが新鮮で、緊張してしまって、普段話すような何でもないことも話せなかった。いや、知らない間に話してたかもしれないけど、良則くんの言ったことを考えてみるとほとんど黙ったままだったんだろう。
黙り込むわたしに何か勘違いしたのか、「無理に言う必要ねーよ」って頭を撫でてくれた。良則くんはいつも優しい。だけど、その優しさがかえってつらく思えるときがある。

「なにに悩んでるのか知らねーけど、愛実なら大丈夫だよ。お前はできる子だもんな。どうしてもつらくなったら俺んとこ来いよ。俺が助けてやる」
「良則くん…」
「どーした?」

鼻の奥がツンとした。ああ、泣く。泣いちゃう。って思ったら、良則くんがぎゅっと抱きしめて頭を、背中を優しくなでてくれていた。ぎゅっとすがるとやっぱり良則くんが好きだって気持ちがあふれてくる。
良則くん、良則くん…!わたし、良則くんのことが好きで好きで好きで仕方ないんだよ。だけど、きっと良則くんにとってわたしはまだ子どもで、妹みたいで、そんなこと言ったら困っちゃうから言えないけど、だけど、良則くんが大好きなの。

「え、マジで…?」

頭のてっぺんの見えないとこで良則くんの困惑した声が聞こえた。
え??あれっ?わたしもしかして…今、好きって言っちゃった?!

(20131218)


High Five!