知らない人、知ってる人

さっきまで飲んでいたジュースで口の中が甘かったから迷わずウーロン茶を選んだ。並々つがれたグラスに手を伸ばすと、横からわたしより大きい手が伸びてきてすごくびっくりした。思わず手を引っ込めるとその人もわたしに気づいた。何かスポーツをしてそうな、わりとしっかりした体格のお兄さんはバツが悪そうにしながら、「悪い」と謝ってくれた。そして自分のより先にわたしにウーロン茶をくれた。

「いえ、あの、ありがとうございます」
「いや」

年上の男の人って意味もなく緊張する。さっきのかんじだと、このお兄さんはやさしそうだけど、なんせ髪を明るい茶色に染めてるから怖く見える。そう思ってたらやけにお兄さんに見られてた。んん?わたしこのお兄さん知ってる…?誰だっけ?そう考えてると「悪い、見過ぎた」ってしかめっ面をしてどこかに行こうとした。わたしも同じように見てたから怒ったのかもしれない。

「えっと、なに?」
「あ、ごめんなさい。つい…」

スーツの裾を引っ張っちゃったお兄さんは怒った様子はなくて、引っ張られた事実に驚いたみたいだった。言い訳がましく、「知ってる人だと思って」と伝えると、きゅっと眉間にシワが寄った。やっぱり怒らしちゃったのかな…

「あっ、おまえ チビの愛実か!」
「わたしもうチビじゃっ…あっ!!ヨシノリくんだっ」

同じ小学校の、5つ上のお兄ちゃん。怖そうに見えたお兄さんは、やっぱり知ってる人だった。

(20131112)


High Five!