変わらない日々

ヨシノリくんに会ったあのあと、少しお話してすぐに別れた。というのも、友だちがわたしを呼びにきてくれたのだ。人が多い上、制服できている子も多かったから迷子だと思ったみたい。

「さっきの人だれ?」
「かっこよかったね」
「近所のお兄ちゃん。松井先生がね、はじめてもったクラスだったんだって」
「へえー!」

ヨシノリくんのことはそんな風にちょっとだけ話して、またすぐに別の話題へと変わった。女の子のおしゃべりなんてそんなものだ。



松井先生の結婚式が終わったあとも、毎日が滞りなく過ぎていった。基本的に家と学校とバイト先をいったりきたりの味気ない毎日を繰り返す。その中でたまに友だちと遊んだり、彼氏とデートをしたりする。
年末が近づいてきて、三年生がセンターや入試に向けての追い込みに入っているのを見聞きして、来年の今頃はどうしているんだろうと思った。とりあえず大学進学とは思っているけれど、その先が全く想像つかない。お花屋さんになりたいなんて夢見たのは子どもの頃だし、バイトだけどその夢は叶っている。
進路に関して完全な答えを出すのはまだ早い気がするけれど、そのことが現実味を帯びてきたのもまた事実で、周りが明確な答えを持っているから、焦る。一人おいてけぼりをくらったみたいだ。
そんなことを考えながら歩いていたからか、家の近くの角で人にぶつかった。オマケにしりもちをつきそうになったところをぐいっと引っ張って助けてもらった。

「悪い、大丈夫か?」
「ごめんなさい!!ありがとうございます」

愛実じゃん、って独り言のように言われて顔をあげるとヨシノリくんがいた。

「あ、ヨシノリくんだ」
「元気ないな。どうした?」

ちょっとかがんで、わざわざ目を合わせてくれたヨシノリくんに、なんだか涙がでてきて、ついつい泣きついてしまった。まるで小学校一年生の小さな女の子に戻ったみたいに。

(20131114)


High Five!