進路の話

いっぱい泣いてしまったわたしが落ち着くと、ヨシノリくんは近所の公園まで連れてきてくれた。昔みたいに優しく手を繋いで。そして空いているベンチに横並びに座って、わたしの話を聞いてくれた。
今、高校二年生であること。いろんな場で進路について問われるけど、なにをしたいのかよくわからないこと。周りのみんなは素敵な夢を持っていて、気持ちばかりが焦っていること。とても羨ましいこと。お父さんもお母さんも好きにしたらいいって言うけど、それがかえって難しいこと。
ヨシノリくんはただ黙って聞いてくれた。全部言い終わると、愛実あのな、って切り出した。

「今はまだ時間があるんだ。いっぱい悩めばいい。こう今は無数の選択肢があるけど、どれを選べば最善かなんて誰にもわからないし、同じことでも最善と思う人もいれば、最悪と思う人もいる。
大学にしろ、就職にしろそれが全てじゃないんだ。やり直しはいくらでもきく。たとえば、進学した先を辞めて違う学部に行ったり、就職したけど仕事を辞めて学校に行ったりな。周り道した分、お金や時間が人よりかかるかもしれない。でも、最終的によかったと思えばお前にとっての最善だろうし、悪く思ってもその先に続く経験であり、財産になる」

これっていう道が決まったらその通り進むと思い込んでいたわたしはびっくりした。まじまじと見ているとヨシノリくんは「全部真に受けないで話半分にしとけよ」って苦笑いした。

「ううん、ありがとう。ヨシノリくん。あのね、またお話聞いてくれる…?」
「いいよ。話ぐらい」

ヨシノリくんはもう泣くなよ、って飛びきり優しい顔で笑って頭をなでてくれた。かっこいい、と昔の憧れとは別の意味でドキッとしたけれど、気づかないふりをした。

「泣いて喉渇いただろ。なんか飲むか?」

奢ってやるよ、って言ったヨシノリくんに「うん」と頷いた。
この日を境に、わたしとヨシノリくんはよく会うようになる。

(20131116)


High Five!