君がため

夜ご飯を食べて、お風呂も入って、あとはもう寝るだけ。最近新しくはじめたゲームを一人でしていると、開けっ放しのドアから真生の声がする。

「けんまー、プリンいるー?」
「いい」
「いらないの?真生 味見もあげないよ?」
「別にいらない」
「そう?じゃあ、いいや」

まだ9時を回ったくらいだけど、もう歯磨きして寝るだけなのに真生はまだ食べるんだ。たぶん、急に食べたくなったんだ。真生はよくある。でもプリンなんて冷蔵庫にあったっけ?
そう思って重い体を起こして台所に向かう。真生はいない。そのまま玄関に行くとちょうどスニーカーを履き終わっていた。

「あれ?研磨もやっぱり食べたくなったの?」
「ちがう。真生どこ行くの?」
「コンビニ。プリン買いにくの」

さっき言ったよ、って真生は言ったけど、絶対言ってない。プリンいるか聞いてきただけだ。

「待って、オレも行く」
「なにかいるの?買ってくるよ?」
「ちがう。今から真生一人で行ったら危ない」
「別に大丈夫だよ」
「こないだ怖い思いしたって言ってた」
「言ったけど、それ地元じゃないもん」

まだ何か言いたそうにしているのを無視して、真生と色違いのスニーカーを履く。一緒に買いに行ったわけじゃないのに、たまたま同じで色んな人にからかわれたのが記憶に新しい。

「ほら、早く行こ」
「うん」

真生が小さく「ありがとう」って言ったのを合図に、二人でコンビニまで歩いた。

(20150601)


High Five!