つめとぎ

「真生の足が中二病くさい」
「足ー?」

てっちゃんがニヤニヤしながら言うから、なんのこと?って思って自分の足を見る。いつもと違うところなんて特にない。あえて挙げるとすればスニーカーが多いけど、今日はサンダルなところぐらい…?

「別にいつもと変わらないよ?」
「爪だよ、爪」
「爪?」

改めて爪を見て納得。そう!真生さんはこの夏ペディキュアデビューをしたのです!!塗ってからもう何日か経って自分では見慣れてたからなんのことかわかんなかった。家でも特に誰からも突っ込まれてないから気づいてるか知らない。いつもはなんでも喋る研磨にも、なんか気恥ずかしくて言えなかった。

「これね、こないだあっちゃんとゆみちゃんと遊んだら二人がかわいいネイルをしててね」
「あーあの派手な子らね」
「派手じゃないし!それでね、あたしも羨ましくなって」

手の甲を上にしたり、下にしたり動かしてみたところで指先は短く切り揃えているだけで自然の色だ。こないだ足の爪と一緒に整えたくらいで何もしてないもの。きれいに整えたけど、バレー部で整える前の状態に戻りつつある。じっと一人で見ていた手を横からてっちゃんにとられた。

「手はできないから足にした、と」
「うん そうなのー」

へぇ、と言ったてっちゃんとはそのまま手を繋いでいる。こうやっててっちゃんから繋ぐことなんてないからなんかヘンなかんじ。

「なんでそんな色にしたわけ?」
「そんな色ってヒドーイ」

てっちゃんはそんな色っていうけど、音駒カラーって気づいてないのかな。せっかく真っ赤をベースに黒でフレンチにしたのに。確かに毒々しいけど。

「もっとかわいげある色とかあるだろ。ピンクとかさ」
「なに、てっちゃんピンク好きなの?」
「カワイーじゃん。女子っぽくて」

意外なところを見つけてしまった。ネイルだけの話かな。てっちゃん黒の下着とか好きそうなのに。まあ、さすがにそんな話はしたことないけど。話題に出されてもどんな顔していいかわかんない。

「いいじゃん。これ見てなにも思わないのー?」
「中二病くさい」

てっちゃんは特に何も思わないようで、最初に言ったことをまた繰り返した。男の子ってそんなもんなの?あっちゃんもゆみちゃんもすぐ気づいてくれたのに。

「これ、音駒カラーなのに?」
「お?……おおー」
「もう、全然気づいてくれないー!」

ごめんごめん、って悪びれずに言うてっちゃんはさっきよりニヤニヤが増してる。……気がする。

「真生もオレたちバレー部がスキだねえ」
「だーいすき」

頭をべたべたなで回すようにされる。そういうのうっとうしいぞ。研磨が嫌がる気持ちわかるかも。
去年の三年生がいたときは、肩身が狭いというか、居心地の悪い、空気の悪い、イヤーなところだったけど、てっちゃんたちに代替わりしてからはそんなことない。みんな大好き。ずっと今のメンバーで続けれたらいいのにな。

「ずっとずっと勝っていけるように気合い入れたの」
「そっか。じゃあ、負けられんねぇな」
「うん」

真面目な顔をしたてっちゃんに負けないくらい真剣な顔で頷いた。

(20150823)

ORAS TM#01


High Five!